6月8日(日) さみしさは呪いのカタチ

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「いままでもお友達がいないってワケじゃなかったんだけどね。ウチは転勤族で、長くても二年、短いとたった数ヶ月で引っ越さないとならないから、そのうちに陽芽は友達を作るのをあきらめちゃったみたい」 「知りませんでした……」 「瑚兎子ちゃんが陽芽に話しかけてくれたんでしょ? お友達ができたって、陽芽、すごく喜んでた。ありがとね」  わたしは首を振った。  お礼を言ってもらえることなんて、なにもしていない。  だって陽芽はわたしを憎んで、呪っている。  陽芽のお母さんが帰って、ユウヒ先輩も仕事があると帰宅し、葵とわたしだけが海岸に残った。 「なあ。夜田嶋さんってホントは何者なんだ? 一瞬、たぬきに見えたのって錯覚じゃないよな?」 「うん……。半分たぬき、半分人間。太三郎狸の子孫だって言ってた」 「へ? あの? 平家を守護したっていう伝説のたぬきの!?」 「葵、知ってるの?」 「おう。オレのじーちゃん、言い伝えとか好きでさー。太三郎狸を祀っている神社がどっかにあるんだってよ。じゃあ、夜田嶋さんって神様の血が流れてんのか。じゃあ、大丈夫だな」 「大丈夫って、どういう意味?」 「神様の子孫なら海に落ちたくらいじゃ死なねーだろ!」  わたしの心に、明かりがぽっと灯った。 「うん。そうだよね! あれくらいで死ぬワケない。きっとそのうち会えるよね」  悲しみのあまりに我を失いかけてた。  そんなの、わたしらしくない!  いつもの自分を取り戻してくれた葵に、感謝だ。 「ありがとう。葵!」 「よーしっ。景気づけにねばねばダンス踊るか。ねばねば~!」 「ねばねば~!!」  夕方になって、境目の山に日が沈む。  今日の逢魔が宮の工事は終わったみたいで、作業員のひと達はだれもいない。  囲われたバリケードの、ほんの隙間からそうっと侵入する。  ――あった。冥花のホウキ!
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