6月3日(火)① 親友とクイーンと彼の事情

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 ――くっ。腹立つ!  葵とは五年一組ではじめて同じクラスになったばかりだが、一緒に班行動をするうちによくしゃべるようになった。 「瑚兎子ちゃんと葵くんってつき合ってるの?」  クラスメイトの、この質問も十数回目。 「いやいや、ただのケンカ友達」 「なーんだ。でもよかった。もしふたりがカップルになったら、三組の陽芽ちゃんがかわいそうだもんね」 「なんで陽芽?」 「だって陽芽ちゃんの好きなひとって、葵くんなんでしょ? 去年ふたりは同じクラスだったから」  はい――!?  聞いてないんですけど! 【フッ。うすっぺらい友情ですね。『親友』が聞いてあきれます】  ――うるっさいぞ。イヤミたぬき!  しかし……たぬの言葉も一理ある。わたし達の友情はうすっぺらの紙よりぺらぺらの……ペーパー友情だったのか……。  ううん。うじうじ悩むくらいなら直接確認しよう。  休み時間に三組に突撃! 「単刀直入に聞くね。陽芽って葵が好きなの!?」 「陽芽はツバキくんを推すので忙しいよぉ」 「そうだよね! よかったー。わたしてっきり陽芽にヒミツにされていたのかと……」 【瑚兎はわたくしのことを陽芽にヒミツにしていますけどねー】  ――うっ。それを言われると胸が痛い。 「どうせウワサになってるんでしょ? 先週、()()のグループに好きな人を聞かれて、つい葵の名前を出しちゃったんだよねぇ」 「それっていつの話?」 「ちょうど瑚兎子が下級生に頼まれて、脱走したポメラニアンをつかまえに行った日の昼休みだよぉ」 【いつもそんなことやってんですか?】  ――しかたないじゃん。頼まれるんだもんっ。 「莉杏がしつこく聞くもんだから、その場しのぎでテキトーに答えただけなのになぁ……くしゅんっ。あー、クラクラしてきた」 「わっ。陽芽、おでこが熱いよ。わたしが風邪うつしちゃったかな?」 「気にしないで。ちょっと保健室で休んでくるから、先生に伝えておいてぇ……」  陽芽を保健室へと見送って、わたしは三組の担任を探しに職員室へと向かった。  すると廊下からキャハハハハと甲高い笑い声が。  厄介なクラスメイトの二人目。莉杏だ。  彼女は一番目立つグループのトップに君臨する、クラスの――ううん学年の女王様(クイーン)。  休み時間には莉杏のグループが廊下を占拠して、大声ではしゃぐのがお決まりの光景。  おしゃべりがうるさいだけで、だれかをいじめるワケではない……ハズだったのが、最近ちょっと変わりつつある。 「あら。瑚兎子、めずらしくひとりじゃないの。親友はまた図書室にヒキコモリ?」  周りの子達が「陽芽っていつも図書室にいない?」「三組に友達いないのかな?」「ウケる~」と口々に笑った。  すっごくイヤな感じ。  この頃の莉杏は、一言一言がイジワルに聞こえて苦手だ。 「陽芽ってあねたばとかいう不人気グループが好きなのよね。もしかして推しにガチ恋ってやつ?」 「えー、でも陽芽は葵も好きなんだよね?」 「浮気じゃん、ヤバ!」  周りの子達も一緒になってキャハハハと高らかに笑う。
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