16人が本棚に入れています
本棚に追加
――くっ。腹立つ!
葵とは五年一組ではじめて同じクラスになったばかりだが、一緒に班行動をするうちによくしゃべるようになった。
「瑚兎子ちゃんと葵くんってつき合ってるの?」
クラスメイトの、この質問も十数回目。
「いやいや、ただのケンカ友達」
「なーんだ。でもよかった。もしふたりがカップルになったら、三組の陽芽ちゃんがかわいそうだもんね」
「なんで陽芽?」
「だって陽芽ちゃんの好きなひとって、葵くんなんでしょ? 去年ふたりは同じクラスだったから」
はい――!?
聞いてないんですけど!
【フッ。うすっぺらい友情ですね。『親友』が聞いてあきれます】
――うるっさいぞ。イヤミたぬき!
しかし……たぬの言葉も一理ある。わたし達の友情はうすっぺらの紙よりぺらぺらの……ペーパー友情だったのか……。
ううん。うじうじ悩むくらいなら直接確認しよう。
休み時間に三組に突撃!
「単刀直入に聞くね。陽芽って葵が好きなの!?」
「陽芽はツバキくんを推すので忙しいよぉ」
「そうだよね! よかったー。わたしてっきり陽芽にヒミツにされていたのかと……」
【瑚兎はわたくしのことを陽芽にヒミツにしていますけどねー】
――うっ。それを言われると胸が痛い。
「どうせウワサになってるんでしょ? 先週、莉杏のグループに好きな人を聞かれて、つい葵の名前を出しちゃったんだよねぇ」
「それっていつの話?」
「ちょうど瑚兎子が下級生に頼まれて、脱走したポメラニアンをつかまえに行った日の昼休みだよぉ」
【いつもそんなことやってんですか?】
――しかたないじゃん。頼まれるんだもんっ。
「莉杏がしつこく聞くもんだから、その場しのぎでテキトーに答えただけなのになぁ……くしゅんっ。あー、クラクラしてきた」
「わっ。陽芽、おでこが熱いよ。わたしが風邪うつしちゃったかな?」
「気にしないで。ちょっと保健室で休んでくるから、先生に伝えておいてぇ……」
陽芽を保健室へと見送って、わたしは三組の担任を探しに職員室へと向かった。
すると廊下からキャハハハハと甲高い笑い声が。
厄介なクラスメイトの二人目。莉杏だ。
彼女は一番目立つグループのトップに君臨する、クラスの――ううん学年の女王様。
休み時間には莉杏のグループが廊下を占拠して、大声ではしゃぐのがお決まりの光景。
おしゃべりがうるさいだけで、だれかをいじめるワケではない……ハズだったのが、最近ちょっと変わりつつある。
「あら。瑚兎子、めずらしくひとりじゃないの。親友はまた図書室にヒキコモリ?」
周りの子達が「陽芽っていつも図書室にいない?」「三組に友達いないのかな?」「ウケる~」と口々に笑った。
すっごくイヤな感じ。
この頃の莉杏は、一言一言がイジワルに聞こえて苦手だ。
「陽芽ってあねたばとかいう不人気グループが好きなのよね。もしかして推しにガチ恋ってやつ?」
「えー、でも陽芽は葵も好きなんだよね?」
「浮気じゃん、ヤバ!」
周りの子達も一緒になってキャハハハと高らかに笑う。
最初のコメントを投稿しよう!