プロローグ

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プロローグ

ザザーン…… ザザーン…… 寄せては返す波の音。 雲一つない青い空にコバルトブルーの海の色―― 波打ち際の白い砂浜の上を1組の仲睦まじいカップルが手をつないでいた。 つばの広い真っ白な帽子にノースリーブのワンピースを着た銀色の長い髪の少女は片手に脱いだビーチサンダルを持ち、素足で砂浜の上を歩いている。そして隣を歩くのは栗毛色の柔らかい髪の男性。彼は優しい瞳で少女を見つめている。 それはまさに、絵に描いたかのような理想の恋人同士の姿であった。 「ちょおっと! そこの2人、待ちなさい!!」 そこへ私は背後から彼らに大声で声を掛けた。 「え? な、何?」 男性は私を振り向き、途端に顔が真っ赤になる。 何故なら今の私の姿はかなりきわどい紐で結ぶタイプの赤いビキニの水着を着ているからだ。でもスタイルには自信がある。こんな水着を着こなせるのはなかなか他にはいないだろう。 「キャアッ! リアンナさん!! 何て恰好してるの!!」 しかし、私は臆することなく隣に立つ少女をビシイッと指さした。 「何がキャアよっ! この格好のどこがおかしいのかしら? ここは海よ? リゾート島よ!? 水着になるのは当然でしょう? それがワンピース姿にビーチサンダルを脱いでるってどういうことかしら?」 サクサクと砂浜を踏みしめながら2人に近付く私。少女はおろおろしているけども、男性の方はビキニ姿の私が近づいてきたので、より一層顔を真っ赤にして視線が泳いでいる。 「あら? もしかして照れているのですか? 王子様?」 私はわざと艶っぽい声で言うと、少女の手からサンダルを奪ってやった。 「あ! 何をするの!」 少女が涙目になって訴える。しかし私は構わずにビーチサンダルを履いてやる。 「リアンナ、そのサンダルはフォスティーヌの物だよ? 返してあげなよ」 「あら? レオナード王子様、だってフォスティーヌさんはサンダルがいらないから脱いでいたんでしょう? だったら私が借りたっていいじゃないですか。実は海で泳いでいたらサンダルが流されちゃったんですよ」 「いらないはずないでしょう? それがないとホテルまで帰れないわ」 しかしフォスティーヌは反論した。 「なら、王子様に抱っこして貰えばいいじゃない。ねえ? レオナード王子様」 私はわざと身体を近づけた。 「それともサンダルはフォスティーヌさんに返すので、ビキニ姿の私を代わりに抱き上げてくれますか?」 「な……ぼ、ぼ、僕は……フォスティーヌを抱きかかえて帰るよ!」 レオナード王子は言うなり、軽々とフォスティーヌを抱きかかえた。 「まあ……レオナード王子様」 フォスティーヌは顔を赤らめて王子を見つめている。 「これで丸く収まったようですね。ではご機嫌よう。私はもう少し海で泳いで帰るので」 「分かったよ、それじゃ行こうか? フォスティーヌ」 「はい、レオナード様……」 こうして私をその場に残し、フォスティーヌを抱きかかえたレオナードの姿が遠ざかって行く。そんな彼らをじっと見送りながら私は呟く。 「頑張ってね。フォスティーヌ」 しかし、私は気づいていなかった。この様子を岩陰でじっと見つめている人物がいたと言う事に――
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