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エピソード39 お別れ
「う、嘘……アレクは……アレクじゃなかったの? 本当はレオナード・キャンベル王太子だったの……?」
茫然と大型スクリーンを見つめていると、フォスティーヌも青ざめている。
「そ、そんな……レオナードが偽物だったなんて……」
「!」
私は踵を返すと足早にその場を離れた。
「え? ちょ、ちょっと待って! どうしたのリアンナッ!?」
フォスティーヌが後を追ってきた。
「……帰るの」
「ええ!? か、帰るって一体どこへ?」
「勿論、自分の家に決まっているじゃない!」
自分の部屋のコテージをの扉を開けて部屋に上がりこむと、クローゼットの中身を全部取り出して次から次へとトランクケースにしまっていく。
そこへ慌てたフォスティーヌもやってきた。
「待ってよ、リアンナ! 後4日でサマースクールは終わるのよ? アレク……じゃなかった。レオナード様だってこの島へきっと戻って来るわよ?」
「そうよ、だからここを出て行くのよ」
私はわき目もふらず、荷物の片づけを続ける。
「どうして出て行くのよ?」
フォスティーヌの言葉に私は顔を上げた。
「だって……私はあれほど何度もアレクの前で爵位の話をしたのに……私がどれだけ身分の差を気にしているか知っているくせに……騙していたんだよ?」
いつの間にか私は涙ぐんでいた。
「リアンナ。アレクがそれだけリアンナの事をすきだったから言い出せなかったんじゃないの?」
「……だからだよ……」
涙を拭った。
「え?」
フォスティーヌの顔に困惑の表情が浮かぶ。
「アレクが……私のこと好きなの……良く分かってるから、アレクの前からいなくなるんだよ……だって彼は王族だよ? 相当身分の高い女性と結ばれなくちゃいけない……それこそ雲の上の人なんだよ? 私がいたらアレクは冷静に女性を選べないじゃない。だから……」
「だから……身を引くって言うの……?」
フォスティーヌの言葉に私は力なく頷く。
「そうだよ……私はアレクが好きだから……彼の幸せを祈ってる。だからここを去るの」
「リアンナ……」
「ね、お願い! フォスティーヌッ! 飛行機を出してくれる? 一生のお願い! お金は……出世払いで!!」
私はフォスティーヌに頭を下げた。
「分かったわ。それにお金の事は気にしないで。すぐにチャーター機を手配してあげるから」
「うん……ありがとう……」
私はギュッとフォスティーヌの手を握りしめた――
****
「ありがとう、フォスティーヌ。私の我儘、聞き入れてくれて」
飛行場で私はフォスティーヌと向かい合っていた。私の背後には彼女が手配してくれた小型チャーター機が待機している。
「いいのよ。リアンナ。だって私達……友達でしょう?」
「フォスティーヌ……」
「それで、もしアレクがリゾート島に戻ってきたら?」
「うん……絶対に私の事は何も言わないで。住んでる場所も……お願い」
「分った。安心して、絶対に教えないから」
「ありがとう。それじゃまたね」
フォスティーヌに手を振り、飛行機に乗り込むとすぐにチャーター機は飛び立った。
****
「……」
私はどんどん小さくなってくる島を飛行機の窓からじっと見つめながら、アレクと過ごした日々を思い出していた。
いつしか私は泣いていた。アレクの事は……もう忘れよう。
美しい思い出として胸に刻み付けておくんだ……
「さようなら……アレク」
そして……3年の歳月が流れた――
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