運命の二人は赤い糸で結ばれている

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運命の二人は赤い糸で結ばれている

 朝日が窓から入り、眩しさを感じると同時に俺は目を覚ました。 瞼越しに飛び込んでくる朝日を受けて目に痛みを感じ、左手を目の前にやり塞ごうとすると、違和感を覚えた。 左手、それも小指に何かが巻かれているような感があったのだ。 まだ重い瞼をゆっくりゆっくりと開いて、左手を目の前にやると、小指に赤い糸が結ばれていることに気がついた。 「なんじゃこりゃ」 俺、神待渡(かみまち わたる)は驚きのあまり慌てて飛び起きた。 俺は左手の小指から赤い糸を解こうとしたのだが、不思議にも解くことは出来なかった。結び目はあるのに、どう引っ張っても解けないのである。 赤い糸そのものも、糸を触った感覚はあり幻や立体映像の類ではない。 鋏で糸を切ってみたのだが、糸を切る感覚はあるものの、切っても切っても赤い糸が切れることはなかった。 脳味噌の中に何か腫瘍でも出来て、赤い糸を見せているのだろうか。不安に思った俺は家族に相談することにした。 父は早朝出勤、妹は部活の早朝練習。このような訳で、俺は赤い糸を母に見せることにした。 台所で目玉焼きを焼いている母に向かって、俺は小指を立てて掲げて見せた。 「()っちゃん、おはよう。あら? 小指なんて立ててどうしたの? 会社でも辞めたの?」 昭和のCMネタで振られても令和の高校生の俺にはさっぱりだ。ちなみに俺が知っているのはネットミーム化したそれをSNSで見て知識にしているだけだ。You TubeでそのCMを見たことすらない。 「何かさぁ? 変な赤い糸が小指に結ばれてるんだけど? 脳腫瘍で変なのが見えるようになったとかだったら怖いから…… 医者行きてぇから金くれる?」 母は俺の小指を見て「あーあー」と言いながらウンウンと頷いた。 「心配ないわよ? これは運命の赤い糸って言って、あなたの運命の人と繋がってるの」 「なにそれ?」 母は「運命の赤い糸」について説明を始めた。 運命の赤い糸。やがて結ばれる男女を繋いでいると信じられている糸のことを言う。目には見えず、決して切れることはないとされている。 元々は中国の伝説で、東アジア全体に広く伝わり信じられている。 母の言う運命の赤い糸の説明を聞いた俺は「オカルト? 小説? 漫画?」と思わずに尋ねてしまった。
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