ふたりは運命の赤い糸に

運命の二人は赤い糸で結ばれている

「どれかって言えばオカルトかな？　でも、結ばれる人同士が繋がっているのは本当よ？　だって、お母さんも高校生の時に突然見えるようになったのよ？　何でって言われても『科学では証明出来ない』ことだから、考えるのはやめなさい？」
「マジ？」
「マジです。その糸ね『結ばれた本人』にしか見えないのよ。こちらが見えていても相手が見えないパターンもあるの。ちなみに生涯見えないパターンもあるみたい」
「ふーん。俺は見えてるけど、相手の女は見えてないってこともあるのか」
「お母さんの場合は、見えるようになった時は焦ったなぁ……　それこそ脳腫瘍を疑って病院に行ってCT撮ってもらったけど、何にもないし。赤い糸が見えるって言っても、誰も信じてくれなかった」
「お母さんの糸はお父さんと繋がってたの？」
「そうよ。高校の時に糸が見えた時は無茶苦茶長くて手繰り寄せるのも無理だったの。会社勤めをしてからお見合いを勧められて、見合いの席でお父さんに会ったら赤い糸が繋がってることに気がついたって訳。お父さんね、あたしに糸が見えるようになった時は海外暮らしだったからねえ……　ああ、お父さんは見えてないわよ？」
母の実家は日本の地方都市だ。その話を信じるなら、その地方都市から海を超えた海外まで赤い糸が繋がっていたと言うことになる。
「何？　もう俺の結婚相手決まったってこと？」
「そうよ。良かったわー、アンタに運命の相手がいるってことが分かっただけでもお母さん一安心だわ」
「ん？　ちょいまって？　仮に俺が全く興味ない女と繋がってたらどうなるの？」
「その人が運命の人よ」
「俺、好きな人いるんだけど……　その子と繋がってなかったら？」
「ご縁がありませんでした。運命の赤い糸は絶対なのよ？　お母さんも詳しく調べた訳じゃないんだけど、運命の赤い糸が繋がってないのに結婚しても上手く行かないらしいわよ？　日本の離婚率は大体三割から四割、これ皆運命の赤い糸が繋がってないのに結婚した結果だと思う。実は後からお母さんの友達にも赤い糸が見えるって子が出てきたんだけど、繋がってない男の人と結婚してすぐに離婚しちゃったわ」
「ちょいまって、子供とか出来たらその限りじゃないとかないの？」
「子供出来ても、赤い糸が繋がってない夫婦だったらすぐに離婚しちゃうわ。運命の赤い糸の力は本物よ？」