運命の二人は赤い糸で結ばれている

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 矢倉音詩イジメであるが、苛烈なるもの。机を囲まれ二分間憎悪のように罵詈雑言、物を捨てる、机に罵詈雑言の落書き、机に葬式の花を置く、トイレで上から水をかける、給水中のプールに手足を拘束して放置、バリカンで坊主にして土下座させての謝罪…… 流石にヤバいと思い、誰かが先生に密告(チク)ったのだが、責任逃れの為か「俺は学校に勉強教えに来てんだよ! 人間性を教えに来てるわけじゃない!」と逆ギレ気味に怒鳴られたそうだ。そしてイジメも黙認状態が続いている。 先生と言うのは先に生まれただけのロクでなしと言うのは本当のようだ。  俺としては吉川黒百合子を中心とした女子達が「勝手にやってること」で止める筋合いもない。 余計なことに巻き込まれないように「我、関せず」の傍観者(ギャラリー)を気取るのであった。 正直なところ、これが原因で矢倉音詩との運命の赤い糸が切れてくれないだろうかと期待していたぐらいだ。 実際のところ、俺も先生と同程度のロクでなしである。  半年後、転機が訪れた。矢倉音詩が転校することになったのだ。理由は親の離婚で、イジメが理由ではないらしい。 俺は全く興味がない故に場所は聞いてないが、遠くに行くことになったらしい。状況が状況であったせいか、クラスメイトの皆への挨拶もなしに矢倉音詩は去っていった。  俺の運命の赤い糸であるが…… どれだけ手繰り寄せても終わりが見えない程に長いものになってしまった。切れてはいないのが残念だが、遠くに行った以上はもう二度と会うことはないだろう。これで一安心だ。
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