運命の二人は赤い糸で結ばれている

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 時は流れ…… 俺は地元を離れて大企業に就職することになった。 俺はそこで運命の出会いを迎えた。 同期入社の女性、八幡貴子(やはた たかこ)との出会いである。彼女は雑誌のモデルにいてもおかしくない程の美貌、誰が見ても魅了される程の美人である。 そして、八幡貴子の右手の小指には運命の赤い糸が結ばれており、その行き先は俺の左手の小指であった。 つまり、俺の運命の人と言うことになる。こんなにも嬉しいことはない! 前に結ばれていた女がいたような気がするが…… どんな奴だったかも思い出せない。 何年も経っているし、切れて新しい相手に結ばれていたのだろうと俺は考えていた。  運命の赤い糸で繋がった二人であるおかげか、俺と八幡貴子の相性は抜群。 入社数ヶ月で俺たちは交際を始めた。一緒にいるだけで楽しいと感じられるし、趣味も合う、お金の価値観も合う、食事の好みも合う、お互いに無言になっても気まずくない、何より「悪口を言わない」ことが気に入っている。 つまり、八幡貴子は何かを貶めるようなことを言わない人格者なのである。 俺は八幡貴子をこの世界に顕現した女神のように思い始めていた。 そして、その女神と運命の赤い糸で繋がっている俺は世界一の幸せ者だ!  八幡貴子と生涯を添い遂げたいと考えること三年…… 俺はプロポーズの決意をした。 給料三ヶ月分の婚約指輪をポケットに携えてデートに臨んだ。デートの締めは都会の町並みを見下ろせる公園の丘の上での夜景鑑賞。 ギラギラと輝く都会の夜景を眺めムードが盛り上がったところで、俺は重い口を開いた。 「貴子さん」 「どうしたの? (わたる)さん」 どうしよう! ここに来て緊張してきた! 体が天辺から爪先までが緊張で震えてくる! ポケットから婚約指輪を差し出して「パカっ」と蓋を開け、「結婚して下さい」と言うだけの簡単なことすらもさせない程に緊張しているのか! この臆病者の俺は! 俺が緊張で動けずにいると、左手に繋がった運命の赤い糸がクイクイと動き出した。八幡貴子も今日のプロポーズを予想していた(てい)で緊張しているのか、モジモジとしながら運命の赤い糸が繋がった右手をジャケットの右ポケットの上にあてて何度も擦っていた。 男、神待渡! 根性見せてやるぜ! 俺は震える手に力を入れて強引に落ち着かせ、ポケットから婚約指輪を出し蓋を開けた。
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