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霊媒師という胡散臭い肩書きのせいか、よく業務内容について聞かれる。
聞いてくる人間はもれなく「こいつのインチキを暴いてやる」という感じの顔をしているが、具体的に話すとそれはそれでヤバいやつだと思われる。
霊媒師を始めてすぐの頃は、相手のそういう反応に少なからず傷つきもしたが、仕事と割り切ってからは傷つくどころか相手は論理的なのだと理解すら示せるようになった。
目の前にいる男にしたってそうだ。真摯に話を聞いて頷いたり、パソコンを打ち込んだりしているが、内心オレを怪しいカルトかなにかだと思っているに違いない。その証拠にメガネをかけた神経質そうな目はこの部屋に入ってから一度もオレを見ない。
オカルト雑誌のインタビューということでやって来たが、話すのはほぼオレの助手とインタビュー相手だけでオレはというと助手の隣で話に相違がないかチェックするだけの楽な仕事だ。仕事と呼べるかすら怪しいが。
この手の仕事は毎年夏が近づくと大量に舞い込んでくる。三十分から1時間程度の取材が多い。
今日も隣で助手が真剣な顔をしてオレの経歴を語っていた。
「それで十年ほど前から、神の光が見えるようになったと」
「ええ、そうです。本当に突然でした」
「なるほど。 神の光以外に霊の姿を見たりされましたか? 」
事務的に質問をする相手の声と座っているだけの状況がこの上なく退屈だった。
早く切り上げろ、と無言の圧を助手に送ったのが功を奏したのか「すみません、今日はこのくらいで」と助手が申し訳なさそうに席を立とうとしている。それにならってオレも席を立つ。そこでようやくインタビュー相手がオレたちの方を見た。
「先生、今日はありがとうございました。 また次回もよろしくお願いします」
「いえ、こちらこそ」
オレと助手が頭を下げると、座りながら相手も軽く頭を下げて呟いた。
「次回の診察は来週ですね。 お大事になさってください」
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