転落

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つまずく人生からの・・・。  私はつまずいた。人生からも、いやそうでなく、本当につまずいたのだ。通勤ラッシュで。 何だか分からないものに、いや靴紐を踏んだのだ。自分の靴紐を。 何で革靴に紐があるのだと、今更ながらだが踏んでつまずいた。後ろ向きに倒れそうになって、私は身体を翻した。  目の前に階段の手摺の角が近付いてきた。 ダメだ、これにぶつかれば大怪我だ。  私は両手で顔を庇った。すると押された、横に。そうか通勤ラッシュだ、押されるのは当たり前だ。 と目の前には階段の奈落が見えた。 下へ向かって伸びる階段だ。  私はそのまま、ゴロゴロと転げ落ちた。 不思議な事に、前には人がいなかった。 まるで映画の階段落ちだ。  よくサスペンスで犯人を脅迫するときに。 階段のある神社や崖っぷちなどを指定するが。 自分が殺されるとは思わないのだろうか?  それに階段を転げ落ちる時に、手で制止すれば良いのに。何故か最後まで落ちる。 んなバカなと思っていたが、私は実際に落ちてみて分かった。手を広げられないどころか、 スピードが増して壁にぶち当たった。  気が付くと暗かった。しかも壁は岩石で、 少し湿っていて熱かった。  私はゆっくり顔を上げた。 そこには鬼が立っていた。 成る程!ここは転校性ならぬ、転向世界だな。 所謂、転生かと思ったら、鬼が、 「ようこそ地獄へ」 と言った。私はどうやら死んだようだ。  何というつまずき、何という転落人生。 私は途方に暮れた。すると鬼は、 「立て!さっさと閻魔様にに査定してもらえ!」 と小突いた。私は、 「すみません、慣れてないもので。初めての霊魂なもので」 と言い訳をした。
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