転校生は日常の崩壊をつれてくる!?

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 白波さんが自分の席へ行くまでの間、教室中がそわそわと落ち着かない空気になっていた。  あたしはといえば、彼女のランドセルが昔ながらの赤色だったから「古風なんだな」、なんて考えていた。 「白波さんってどの辺に住んでるの?」 「身長いくつ?」 「好きな食べ物は?」 「好きなタイプは?」  一時間目の授業が終わると、女の子たちが白波さんの元へむらがった。  男の子たちは遠くからその様子をながめていて、あたしも自分の席からチラッと見る。すでに、白波さんはうもれていた。 「……」  そしてあたしは一人、ぽつんと座っている。  あれ? おかしい。いつもならチャイムが鳴って、すぐに誰かが声をかけてくるのに。  ああ、転校生が珍しいんだよね。あたしだって、一瞬気になっちゃったんだもん。  今日くらいはゆずりましょう、人気者の座を。  仕方がないので、次の授業の準備をする。  ええと、国語ね。漢字ドリルでも先に進めちゃおっかな~。  なんて、一週間前までは気楽に考えていた。 「おかしい」  今日の五時間目は体育の授業。  外に出て縄跳びをするのだけど、あたしは今、一人だ。  体操服に着替え、トイレへ行っている間にみんないなくなっていた。  今までだったら、教室で誰かが待っていてくれたのに。 「これも全部……白波優月(しらなみゆづき)のせいだ」 「わたしがどうかした?」  突然うしろから声がして、あたしは慌てて振り返る。  そこには、白波優月が立っていた。 「え、えっと」  今の聞かれた……よね? ど、どうしよう……。  動揺して次の言葉がでてこない。  そんな固まっているあたしを気にもせず、白波優月はなぜかにっこり笑った。 「あ、わたしはトイレ行ってたんだ。みんなもういないよね? 一緒に行こ!」 「う、うん」  思いがけない展開に、あたしはの心はとてもザワザワした。  今、クラスの人気者は白波優月だ。  でもあたしには、もう待っている人がいない。  なんでだろう。みんな、あたしのこと好きじゃなかったの? 「あの、まだみんなの名前を覚えてなくて。名前、教えてもらってもいい?」  あたしの複雑な心を知らない白波優月は、のほほんとした口調で話しかけてきた。 「黒宮」 「黒宮さん。下の名前は?」 「……キミコ」 「黒宮キミコさん。よろしくね」 「名前を呼ばないで」  白波優月の言葉をぴしゃりと止める。   「え? どうして」 「なんでもいいでしょ! 名前を呼ばれるの嫌いなの」 「ご、ごめんね」
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