ふしぎな矢印

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 ぱっと目を開けると、そこは保健室のベッドの上。  うーん……よく寝た。今、何時かなぁ。  起き上がってカーテンを開けると、先生とひざをケガしている子はいなかった。 「先生?」  どこ行ったんだろう。  壁の時計を見ると、十五分くらいしかたっていなかった。  困った。このままだと、今から体育の授業に出なくちゃいけなくなる。  今は、クラスの誰にも会いたくない。  やっぱりもう少し寝てようかな……ん?  なんとなく見たカレンダーに、大きな矢印が書かれている。 「左?」  矢印は左をさしていて、左を見ると保健室のドアにまた大きな矢印があった。  近づいて左を見る。なんにもない。  ドアを開けて左を見てみると、廊下にまた矢印があった。今度はまっすぐ。そしてまっすぐの矢印は、何個も続いている。  あたしは保健室を出て、その矢印をたどってみた。  廊下の行き止まりにきたら、次は右の矢印。  右は階段。上に行くってこと?  階段をのぼると、踊り場には上向きの矢印があった。  そのまま一番上の三階までのぼる。また右の矢印。  矢印どおり右へ歩いて行くと、次は消火栓をさしていた。念のためまわりを見る。他の矢印は……見あたらない。  え、ここで終わり? 消火栓って、火事のときに使うやつだよね? 火を消す? でも火事なんて起きてないし……んん?  よく見ると、消火栓の扉がすこーしだけ開いている。  ……この中ってどうなってるんだろう。  胸のウズウズがおさえられなくて、そのまま消火栓を開けてみた。 「わあああ!」 「うええええ!?」    開けたとたん、小さな白いわんこが大声で叫んだ。  あたしもつられてびっくりして、とんでもなく間抜けな声で叫んだ。 「わ、わんこ!?」 「あああ! お客さまですね。失礼しました!」  わんこはそう言うと、あたしに向かって深々とおじぎをした。  しゃべってる……。  ぽかーんとして動けずにいると、さあさあ、とわんこがあたしの腕をつかんで消火栓の中へ引っぱった。 「え、なになに!?」 「ボクはお店までのご案内と、番犬をやっております」 「お、お店? 案内?」 「はい。初めてのお客さまは、迷子になる方が多いですから」  わんこはウキウキと、すごく楽しそうに話している。 「ボク、お客さまのご案内が初めてで。それも人間のお客さま! とってもうれしいです」 「お店ってなに? なんでわんこがしゃべってるの?」 「あ、お呼ばれの方ですか。では、歩きながらご説明します」  さあ行きますよ、と暗い消火栓の中をわんこが歩きだした。  なんでココにわんこがいるの? なんで消火栓の中に入れるの?  いろいろとワケがわからないけど、なんとなく面白いことが起こるような気がして、とりあえずついていってみることにした。  
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