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消火栓の中はせまく、人間のあたしがぎりぎりとおれるくらいの幅しかなかった。
おまけに洞窟の中みたいに暗くて、ほのかな明かりでなんとか道が見えるだけ。
一人きりで歩くなら、ちょっと怖いかもしれない。
「ボクたちのお店は、いろいろなお客さまの休憩所です」
「休憩所?」
「はい、修行中の方、勉強中の方、散歩途中の方など。みなさまのお休みどころ、といった場所です」
ふーん? 公園のベンチみたいな場所ってこと?
「どうしてあたしがそこへ行くの?」
「お招きされたんですよ!」
わんこがニコッと笑って答えた。
お招き? なんであたしが?
よくわからないけど、あたしたちなにかのお店に行くんだよね?
しばらく歩いていると、だんだんと明るくなってきて、緑のツタでおおわれた建物が見えてきた。
「つきました!」
「すごい……」
窓も入口も見えないほど、全部がツタでうめつくされている。
手前には小さな看板があり、お店の名前が書かれていた。
「とこしえ……茶店?」
「とこしえ喫茶店です!」
「あー、そうそう! きっさてん! 知ってたよ!」
喫茶店ね。読めなかったわけじゃない。ほら、喫の部分がかすれてるもん。書いてあるって気づかなかっただけだ。
「えー、それでは。コホン」
わんこは背すじを伸ばし、キリっとした表情になった。
「ようこそ、とこしえ喫茶店へ!」
突然ツタの中からドアが現れ、あたしはその中へと吸い込まれていく。
「ひゃあああああ!」
「いってらっしゃいませー!」
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