転校生は日常の崩壊をつれてくる!?

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転校生は日常の崩壊をつれてくる!?

 あたしは美少女である。  さらさらの髪、薄茶色のきれいな瞳、白くてつやつやな肌。  家族や親戚からは「天使」といわれ大切にされてきた。  道を歩けば誰もが振り向き、この姿にみとれるはず。  あたしは、自分の顔が大好きだ。 「黒宮さん、おはよう!」  教室へ入ると、クラスメイトたちが一斉にあたしを見た。 「おはよう」    にっこりと笑顔であいさつを返す。 「黒宮さん、今日の服かわいいね」 「黒宮さん宿題やった?」 「黒宮さん」  周りに、つぎつぎと人が集まってきた。  わかる、わかるよ。  こんなにかわいいもん。誰だって仲よくなりたいに決まっている。  クラスメイトとの会話を一つずつ片づけ、今日も朝の仕事を終えた。  人気者はつらいよね。ファンとの会話も意外と時間がかかるのだ。  ――キーンコーンカーンコーン。  チャイムが鳴り、先生が教室へ入ってきた。  そのうしろに、背が高くすらっとした人が立っている。  わあ……きれいな子だなあ。 やさしい目をして、さわやかな雰囲気があふれていた。    はっ! あたし、今みとれてた?  まさか、他人をきれいだと思うなんて。  こんなことは滅多にない。心の底からびっくりした。 「転校生かっこいいね」 「男の子かな?」 「えー? 女の子じゃない?」  案の定、クラスメイトたちも転校生を見てザワザワと騒がしくなった。  「はーい! みなさん静かにしてくださーい」  パンパン! と先生が手をたたいて、みんなに注目するよう合図する。 「この前お話しましたが、今日から五年一組の仲間が増えます。では、自己紹介をしてください」  先生がそう言うと、転校生は黒板の前に立ちクラス全体をぐるっと見回した。 「水上小学校から転校してきました、白波優月(しらなみゆづき)です。よろしくお願いします」  凛とした、よくとおる声。耳にすっと入ってきて、なんだか心がふわふわする。 「あ、ちなみに女です。よく間違えられるから先に言っておきます」  そう言うと転校生は、へへっと照れたような笑顔を浮かべた。  白波さん、女の子なんだ。 「女の子だった」 「やっぱり! かっこいい」  性別がわかったところで、女の子たちが騒がしくなった。  このクラスにはいない、いわゆる王子様タイプなんだよな。白波さん。 「じゃあ一番端になっちゃうけど、空いているうしろの席へ座ってください」 「はい」
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