最終話 姉妹

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最終話 姉妹

私は目を覚ました。そこは病院のベッドの上だった。どうやら助かったらしい。目の前にお母さんとお父さんが居た。 妹を助ける事が出来た、だからもう良い。最後に両親の顔を目に焼き付けておこう。私は両親の顔をしっかり見る。 「……今までごめんなさい、遥香(はるか)……」 「悪かった遥香、家族が嫌いなのはいい。全てお父さんのせいなのだから……。でも死ぬのだけはやめてくれ!」 私は驚いてお母さんお父さんを見る。二人は泣いていた。 それに「遥香」は姉である私の名前。今の私は妹の「風香(ふうか)」のはずなのに。 私は手首に巻かれているリストバンドを見て驚く。「高橋遥香」、私の名前だった。 あの状況で助かった?そんな訳ない、確かに川の中で意識を失くしたのに……。 「風香は……?まさか風香が……?」 私は後悔した。まさか最後の願いが妹の命を奪う事になるなんて。風香は私と入れ替わって代わりに死んだ。妹なんていなければ良かったなんて思ってしまったから。 どうしてあんな酷い事思ったのか。どうして妹になりたいなんて願ってしまったのか。後悔してもしきれない。 「お姉ちゃん……」 聞き慣れた声に、涙を拭いて声がする方を見る。そこにはベッドに座る風香が居た。 「風香……」 私は風香に近付く。 「起き上がって大丈夫?苦しくない?」 「うん、お姉ちゃんが救急車呼んでくれたから」 あの電話繋がっていたんだ。私は力が抜ける。風香は助かったのだと……。 「私を助けてくれたのは?」 「たまたまだよ。川の岸に運良く流れ着いて、意識を失くしていた所犬の散歩をしていた人が見つけてくれたんだって。これポーチ、服は捨てたけどこれだけは握っていたの」 そう言い私に化粧ポーチを渡してくれる。あの熊のビーズ編みが美しく光っていた。 きっと風香は冷静に対応したのだろう。いつも苦しい思いをしていたから、水で息が出来なくてもパニックにならなかったのだと私は思った。……けして喜べない風香の積み重ねていたものが私の命を救ってくれた。 「……お母さん、お父さん、今までごめんなさい……。やっと二人の気持ちが分かった。健康な子と病気の子が居たら、病気の子を気にかけないといけない。……風香がこれほど重い病気だなんて知らなかった……」 「ううん、後悔しているの。風香ばかりで遥香を全然見ていなかったと……。いつ……どうなってもおかしくないと言われていたから……」 やっぱりそうだったんだ。それを風香の前で言っている。おそらく私が寝ている間に、風香が両親に知っていたから大丈夫だと話したのだろう……。 「今まであなたの事を知らなくてごめんなさい」 手を取り合い謝った。 私達は互いを助け合っていた。きっと臍の緒によって結ばれていた運命の双子だったのだろう。
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