秋祭り当日

6/6
前へ
/64ページ
次へ
 有原くんの後を追いながらミヤさんのところへ向かうと、人混みがマシになっていた。 「ミヤさーん!」  わたしが声をかけると、ミヤさんは疲れ切った表情のまま、わたし達に頭を下げた。 「お疲れ様です。西野さん有原くん」 「いや、ミヤさんの方がお疲れですよね・・・」  ひとまず休んでもらおうと、わたし達は事務所へとミヤさんを引っ張っていった。  わたし達がする手伝いは、お守りの販売と境内の掃除だった。  お守りの方は、他の巫女さんや神職さんに教えてもらいながら販売を手伝った。 「これ、ください」  お守りの販売に慣れてきたわたしに、例のお守りを買う人が現れた。 「はい!ありが・・・、って松嶋くん!これ買ってくれるの!?」 「だってさ、山瀬さん可愛いし、あんなにずっと一緒にいたら・・・。おい有原!ニヤニヤするな!」  松嶋くんが指差した方を見ると、珍しく有原くんがニヤニヤしながら松嶋くんを見ていた。  そんな嬉しいこともあって、気づけばお祭りの時間は終わっていた。 「お二人共、お疲れ様です。こちら、お茶です」  ミヤさんがねぎらいの言葉をかけながら、ペットボトルのお茶をわたし達に渡してくれた。 「ありがとうございます。・・・でもあのお守り、もう売り切れちゃいましたね。わたし、あれほしかったのに」  余ってないかなという気持ちも含みつつ訊いたが、ミヤさんは首を横に振った。ガッカリしていると、横からあのお守りが出てきた。有原くんが顔を赤くしながら、あげると言った。 「・・・いいの?」 「西野さんだから、渡すんだよ」 「あ、ありがとう・・・」  まさかあのジンクス聞いてなかったわけないよね・・・。受け取ったわたしも顔が赤くなったのは、言うまでもなかった。  そんなわたし達のことをからかうかのように、鈴がガランと鳴った。 〜完~
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加