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その場所につくと、少し空いたスペースがあり、わたし達はそこに避難する。
「ふぅー、すごい人だね」
「想像以上だよ。みんな大丈夫か?」
涼しい季節なのに、松嶋くんは汗をびっしょりとかいていた。そんな松嶋くんに、花菜はカバンからハンカチを取り出し手渡していた。それを少し顔を赤くして受け取っていた。
そんな二人のやり取りを見守っていると、有原くんがある部分を指差して言った。
「あっちでお守り売ってる人、ミヤさんだよな?」
「え?本当に?」
どうやら、女の人が多く集まっている場所にミヤさんがいたようだが、人の壁で全く見えない。
しばらくジャンプしたり背伸びしたりして探していると、ようやくミヤさんの姿が一瞬見えた。
「あ、ほんとだ。すごく大変そうだね」
「・・・まさか、あの手伝いをしろってことなのか?」
「あはは・・・。その可能性が高いかもね。でも夕方からって言ってたから、掃除かもしれないよ。というかあの人達、お守りよりもミヤさん目当てに見えるけど」
ミヤさんの周りを女の人達が取り囲んでいた。スマホを向けられると、断っているのだろうか、申し訳なさそうに首を横に振っていた。
その攻防がしばらく続いたあと、急にみんながきれいに列になって並び始めた。
「・・・急にどうしたんだ?」
同じように様子を見ていた有原くんが、戸惑ったような声を出した。
すると、お守りを買った女の人がミヤさんと握手をして離れていった。どうやら、お守りを買ったら握手ができることになったらしい。
しばらくその場所は握手会となっていた。
状況を知らないおじさんも並んで、ミヤさんと握手をしていた。“若いもんから、元気もらったわい”と喜んでいた。イケメン効果はすごいと実感した瞬間だった。
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