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2.二度目
前回で懲りていたので断ろうとしたが、元来それほど気も強くない。「やろうよ〜! やろうよ〜!」「人数足りないとできないじゃーん!」としつこく誘われ、流されるまま再び参加することになってしまった。
「さやちゃんの中間テストの順位は?」
みきが質問する。ああ、またか、と私はげんなりしながら付き合う。
13、とコックリさんが数字を指す。
「そんなに頭いいんだ! さやちゃん!」
ふたりが高い声を上げる。が、その声の中にわずかに不満そうな響きがあるのにも私は気づいていた。
「じゃあ、次は〜。さやちゃんの寿命は?」
みきの言葉に私はぎょっとした。
この子は私になにか恨みでもあるのだろうか。
「なんで、そんなこと訊くの?」
尋ねた私にみきはつやつやした唇を尖らせながら言った。
「いいじゃん別に。どうせさやちゃん信じてないでしょ? こんなのに夢中の私たちのこと、馬鹿にしてるくらいだもんね」
「してないよ。馬鹿になんて」
「嘘。いつも誘うと迷惑そうにするじゃない。難しそうな本読みながらさ。そういうとこむかつくんだよね」
ね〜、とみきとやよいが示し合わせるようにして声を合わせる。
私は愕然として言葉を返せなかった。
確かにみきのこともやよいのことも、自分とは合わないと思ってはいた。だが、まさかそんなふうに彼女たちが私のことを思っていたなんて思いもよらなかった。
「ごめん、そんなつもりじゃ……」
そう私が言いかけたときだった。
十円玉がつつ、と動いた。
「ご」「が」「つ」……。五月?
「こ」「こ」「の」「か」……。
「五月九日?!」
やよいが素っ頓狂な声を上げる。三人で目を見かわし、え、え、と戸惑っている間も十円玉は動き続けた。
そして。
「五月九日 みきと死ぬ」
そう示して止まった。
「はああ?!」
大声を上げたのはみきだった。
「なんで? なんで私がさやちゃんと死ななきゃなんないの? 意味わかんない! はあ?」
「みき、落ち着いてよ。まだコックリさん帰ってないし。帰さないと」
やよいがおろおろしながらみきをたしなめるが、激昂したみきは十円玉から手を離し、やよいに詰め寄った。
「あんたでしょ? これ動かしてるの!
さやちゃんをちょっとからかってやるってそういう話してきたのあんたじゃん! それがなに? なんでこんなこと言われなきゃなんないの?」
「私じゃない。私じゃないよ」
「じゃあ、さや、あんた?! 陰険過ぎるでしょ! こんなの!」
それを言うなら、あんな質問をする方が陰険じゃないだろうか。反論したかったが私はなにも言えずにいた。
突然寿命を宣告されたのだ。みきが動揺するのだって当然だ。
ただはっきりしているのは私が故意に動かしたわけじゃないということだ。
コックリさんは降霊術だし、本当に神霊からのお告げの場合だってある。だが、多くは術者側の無意識が起こしているものだと本の虫であるところの私は知っていた。
だとしたらこれは三人の誰の無意識なんだろう。
結局、このお告げの真意はわからぬまま、私たちはその日別れた。
その二週間後。
五月九日。
──なにも起こらず一日は過ぎた。
結局のところ、あれが一体なんだったのか私にはわからない。
ただこの一件がきっかけで、私とみき、そしてやよいの三人は完全に分断された。一緒にコックリさんをやることは当然なくなったし、学校でもあまりしゃべらなくなった。
疎遠になったまま、私たちは中学を卒業した。
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