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1.流行
中学生のころの話だ。
学校で降霊術が流行った。
いわゆるコックリさんというやつだ。
五十音と数字と「はい」「いいえ」、そして鳥居を書いた紙と十円玉を使って行うあれだ。
ああいうのははしかみたいなものなのか、皆一度は通るものらしい。私の学校ではとにかくみんなやっていた。
正直、あまり気持ちのいいものでもない。
なので極力参加しないようにしてはいたが、流行りものを頑なに避け続けるというのも友人たちから仲間外れにされる原因になりやすい。
そのため、しぶしぶながらも何回か参加した。
あるとき、幼馴染のみきがコックリさんにこんな質問をした。
「さやちゃんのことを好きな男子は誰ですか?」
こいつは一体なにを言いだしたんだ、とみきに軽い殺意を覚えた。
だって私なんて、眼鏡でちびで教室の隅で黙って本を読んでいるようなトップ・オブ・ザ・モテナイだ。
そんな私を好きな男子がいるわけがない。
いない。そう返ってくると確信していた。
が、コックリさんはある男子生徒の名前を指し示した。
それは、学年一キモいと嫌われている男子の名前だった。
「気にすることないよ! そんなわけないんだからさ!」
みきが慰めるように私の肩を叩くのが、どうしようもなく疎ましく思えた。
最悪なのはその後しばらく、その男子と私が付き合っているらしい、などという噂が流れたことだ。
このことを知っているのは、あのとき一緒にコックリさんをしたみきとやよいのふたりしかいない。
人間不信もここに極まれりだ。
だが、証拠もない。幼稚園のころからの付き合いだし、家も近所で親同士の仲も良い。こじれるのも面倒だった私は強い不信感を抱きつつもふたりと友人関係を続けた。
そんなある日、またもコックリさんに誘われた。
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