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「スゲー嬉しい 。…なぁ、このまま一緒に居たい。上書きしたい。
……ダメか?」
「…えっ」
その意味がわかって戸惑って思わず両手を離してしまった。
「あっ、ゴメン。今日はもう帰ろう。」
パッと抱き締められていた両腕が離された。僕は慌てて抱き付く。
「――ダメじゃない。一緒がいい。遼一と一緒にいたい」
「可愛い過ぎ…」
ボソリと呟かれ、聞き取れずに見上げた瞬間、顎を上げられ唇が重なった。頭を押さえられ、腰を抱き寄せられ身動きができない程。
僕は両手で遼一の背中をまたギュッと掴む。
離れないように
離さないように
プルルッ、プルルッ…
スマホの着信音が切れてはまた鳴り響く―――…
「……出ないの?」
「…ゴメンね?」
ジーンズの尻ポケットからスマホを取り出す。画面を見ると里央からだった。
僕は画面をタップした。
『カナ、今どこにいる?』
「 里央、…ゴメンね?僕のキモチを優先してくれるって前に言ってくれたよね?覚えてる?」
『ああ?……あっ、そういう事か。なるほどね。俺な?かなり察しが良いの。
帰る時、偶然カナが手を引っ張られて歩いてるのを見たんだ。なんかヤバイことに巻き込まれたのかって思った。だから、慌てて電話したんだ。出てくれて良かったよ…。安心した。
邪魔はしないよ?だけど、1つ聞いても良い?
なぁ、俺との時間幸せだった?』
「……うん、幸せだった。ウソじゃない」
『俺も一緒に居られて良かった。幸せだった。』
「……ありがとう、ゴメンね?」
『カナが本当に好きな人と今一緒に居るんだな?』
「うん」
『そっか、今、幸せ?』
「うん」
『なら、良かった。今までありがとう。…アッサリしてると思ってるかもしれないけど、結構ヘコんでるんだぞ?ははっ』
「ゴメンなさい。」
『幸せにな?じゃあな?』
「ありがとう、里央…先輩」
プツン、ツゥー ツゥー…
と、今度は電話が切れた音が聞こえた。
スマホ画面にもう一度、ゴメンなさい。ありがとう。と呟いた。
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