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唇が離れ、そして―――…
「奏多 、好きだ。俺と付き合って」
見上げると、僕の顔を覗き込み、視線が絡む。
少し前なら嬉しかったと思う。
ずっと好きだった人からされたのだから。
あんなにも恋憧れてた人から抱き締められ、キスをされ、好きだと言われたのだから…。
だけど――――
たった3ヶ月の付き合いなのに、今の僕の心には里央が居て、セフレでも良いから側にいたい。って思っていて…。
押さえられてた手が少し力が抜けた。
その隙に僕は力いっぱい突き飛ばす。
よろけた遼一の腕の中から解放され後退りし少しだけ安堵した。
「ゴメン、遼一、僕は……」
「……俺じゃ、ダメか?」
「……ゴメン…」
そう言ってまた俯く僕をもう一度抱き寄せようと遼一が手を伸ばそうとした。
やめてと言葉を発する前に―――
「おいっ!」
後ろから怒鳴り声がして振り向くと里央が息を切らしながら、僕を通り過ぎて、遼一目掛けて走って来た。
遼一の胸元を掴みかかり、反対の手で殴りつけた。
「何 ふざけた事してんだっ?!」
里央が、もう一度拳を振り上げたのを見て、咄嗟にその手を両手で掴む。
「里央!ダメっ!やめてっ!」
「…っ!カナ 離せ!」
遼一が顔を里央に向ける。
胸元は里央に捕まれたまま、睨み吐き捨てるように言い放つ。
「ふざけてんのは、テメーだろうがっ!あんた、彼女居るんだろ?奏多をセフレにしてんだろ?
遊びなら奏多を解放しろよっ!」
「はあっ?!彼女なんていねーよ!いつの話だよ?今の俺にはカナだけだっ!何 勘違いしてんだよ?」
里央はその手を離さず僕を見る。
「まさかカナ…も?俺なりに誠実に付き合ってきたつもりだったけど…。カナもそう思ってるのか?」
そう言った里央は悲しそうだった。
でも本当に?だって…。
「里央…手、 離してあげて……」
そう言うと、里央は遼一を睨みトンっと突き飛ばした。
3人とも下を向いたまま立ち竦む。
僕はゆっくりと口を開く。
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