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「だって…彼女、カナちゃんと…長いんでしょ?…今日だって途中で2人で抜け出したんでしょ?」
「カナちゃん?彼女ってカナミの事?何で知ってるの?」
「…………」
驚いてる里央に遼一が僕の代わりに応える。
「ここから近いコンビニに行く時に、同じくらいの年の…、派手な服装のヤツ3人が俺らの前を歩いてて、話てたのを聞た。
“リオウ”なんて名前珍しいからあんただと直ぐにわかった……」
「そう。わかった。あいつらか…。でも、違うよ。カナミとはとっくに別れてる。今日抜けたのはカナミの彼氏の所に送る為だ。…カナミの相手、同じ学校の先生なんだ。カムフラージュで付き合ってるっと事にしてるだけなんだ。」
「そんな必要性あんのかよ?」
「俺から別れてって言ったから。でも、その時には今の彼氏と良い感じにはなってたのかな…。
良くは知らない聞いてないから。
カナミに頼まれたからさぁ、ちょっとした恩というか、義理というか、そんな感じなんだ。
納得できないかもしれないけど…。」
「……友達に、…僕の事セフレって言ってたんでしょ?」
「っ!ごめん。それは悪かった。そんなつもりで言ったんじゃないんだ。
カナミと会えない時用にセフレ紹介してやるってしつこくって…。話の流れで…話を合わせてただけだったんだ……。」
「そう、…だったんだ…。」
「帰る時、偶然カナが手を引っ張られて歩いてるのを見たんだ。なんかヤバイことに巻き込まれたのかって思った。だから、慌てて電話したんだ。出てくれて良かったよ…。
カナ、誤解させてゴメンな?
カナの事ちゃんと好きだよ。」
里央は真っ直ぐ僕をみつめてる。
「僕こそ、ゴメン…」
遼一に視線を向けると、少し泣きそうな、悲しそうに顔を歪ませていた。が、一度目を瞑り、ゆっくりと深呼吸して目を開いた。
僕を見て優しい笑みを浮かべる。
「奏多、さっきのは忘れて。勝手だとは解ってるけど…。ゴメンな。俺、帰るから、…またな。」
そう言って背を向けて行ってしまった。
立ち去る背中を見送る。
遼一、ずっと好きだった。
キスされて好きだと言われて正直グラついたのは秘密だけど。
遼一、ゴメンね。
僕が欲しいのは里央なんだ。
里央に向き直ると、笑みを浮かべ、強い力で抱き寄せ、僕を腕の中に引きずり込んだ。
「 好きだよ、 カナ」
「里央、僕も好きだよ。」
僕も里央の背中に腕を回しギュッと抱き締めた―――…。
――― END ―――
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