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2人無言のまま駅前通りの脇にある小さな公園まで、遼一に手首を捕まれたまま歩いて来た。
月明かりがあっても、街灯があっても、夜の公園がいつもより少し怖く感じる。誰も居ない公園だからかな…。
だけど、遼一と一緒だから怖くないと思った。
遼一の足が止まり、手首を捕まれたまま向き合った。
僕は遼一を見上げた。
「――― なぁ、そんな男、別れろよ……。」
「え?」
驚いて聞き直してしまう。
「自分でもどうしたらいいか、分からなくて…今まで逃げてた。だけど、今逃したら もう言えないと思って――…。
俺と付き合って欲しい。友達じゃなく、恋人として」
「りょ…」
「奏多が好きだ。」
「……っ!……本当に…?」
「こんな時に言うのズルいかもしれないけど、奏多が好きだ。」
まさかそんな事を言われるなんて思わなかった。だって告白した時振られたし。男同士の恋愛なんてイヤだろうと思っていたから。
頬が熱くなった。
「遼一はズルくない。ズルいのは僕の方なんだ。だって……」
じわりと涙が出てくる。
今、泣いたらダメだ。話せなくなる。ちゃんと伝えなきゃ…。
「ズルいのは 僕なんだ。逃げてたのは僕の方なんだ。さっきの会話を聞いて…、先輩は僕と同じ事をしてたって…わかって、だから…。
僕ね、ずっと遼一の事が好きだったんだ。だけど、フラれたから…友達でいられるだけで良いって自分にウソを付いてた。
先輩から声をかけられた時、声が遼一とソックリだったから…。だから、付き合ったんだ。背格好も同じだし、目を閉じたら遼一だと思えた。遼一に名前を呼ばれてる。遼一にキスされてる。遼一に抱かれてる。そう思えてたんだ。
僕、汚い?それでも僕と付き合ってくれる?」
「奏多がいい。俺には奏多だけだから。」
遼一が僕をそっと抱き締めてくれた。
「遼一 好き…大好き。」
僕は遼一の背中に両手をまわし、ギュッと力を込めた。
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