ベリルの恋心

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ベリルの恋心

 花瓶と写真一枚で真実に近い憶測に至るなんて、常連客の感性には脱帽するしかない。 「……お前といい北山といい、今時の俳優ってのは変人ばかりか」  精一杯の皮肉を込めてそういうと、「あ、やっぱりツクシもわかったんだね」と納得したように頷いたので、店主はそれ以上の指摘(ツッコミ)は諦めて、馴染みのポットに残った紅茶を自分のカップへと注ぎ入れた。 「クソ都合のいい妄想の風呂敷を広げるのも程々にしときな。花瓶(ソレ)作ったヤツは人見知りな上に気が弱いんだ。あまり理想を押し付けないでやってくれ」  男はそれを特に咎めもせず、きらきらと光る琥珀色の流水を眺めて懲りずに口を開く。 「えーひどいなぁ、ただの事実なのに。あっ、そうだマスター」 「――まさかこの子はアナタの好い人ではないよね?」 「生憎と年下はピクリともこなくてね」  そういって蜂蜜を溶かしたように甘ったるい声で威圧する美青年に、店主は背中に薄ら寒いものを感じながら、当分はコイツとヒカルを引き合わせるのはなるべく控えようと心に固く誓った。
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