あなたと、会えたら

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ひええ……。私と佐藤先輩の目の前に、さっきまで練習していた野球部員が全員整列した。その隅に、明るい色のジャージとTシャツを身に付けたマネージャーと思われる女子の先輩も立っていた。 「星宮百永さんだ。野球部のマネージャーにとっても、とおっっても!興味があるそうだ」 「さ、佐藤先輩……」 この空気の中で「やっぱやめます」だなんて台詞、絶対言えない。 当然、ここにいる全員は運動できる格好をしている。大学生なんだから、と気合を入れた服装の今日の私の格好はグラウンドでは浮いてしまう。 「せ、先輩。私、せめてジャージとか持ってきた日に改めて……」 「そう言わずに。なあ、誰かジャージとかTシャツとか余分に持ってない?」 「俺、持ってます」 同じ一年生っぽい男子がジャージとTシャツを貸してくれるみたい。それなら。今日ヒールじゃなくてスニーカー履いてて良かった。 「お、高瀬。頼むわ」 高瀬……?その、心地良い低音。忘れるはずがない。 「部室、こっち」 高瀬と呼ばれた彼は視線で部室に行くよう促した。整ったそのお顔。忘れたくても忘れられなかった。まさか……。 「百永ちゃん、市立大だったんだな。俺のこと、覚えてる?」 「お、覚えてる、よ。勿論。永翔くん、でしょ」 「電車で会えなくなったの、俺結構ショックだったんだけど」 「え」 私と会えなくなったの、ショックだと思っててくれたんだ。その大きな瞳にじっと見つめられると、何だか吸い込まれそうだ。 私にも、希望があるかな? ねえ永翔くん。今度は私に、運命感じてくれる? fin. Copyright(C)2023-藍沢咲良
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