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「永翔。高瀬永翔」
「永翔くん……は、何年?」
「2年。百永ちゃんは?」
「私も2年」
良かった。同い年だ。共通点があるって嬉しい。って、永翔くん、さっきから私を名前呼び。私もどさくさ紛れで彼を名前呼び。もう嬉し過ぎて溶けそう。
「一緒だったか。何中?」
「北陵だった。永翔くんは?」
「丸の内」
「県図書の近くの?」
「そう。グラウンド狭くてさ」
ずっと見つめるだけだった永翔くんとこんなに近くで。2人だけで会話をする日が来るなんて。電車なんて、駅になんて永久に到着しなければいいのに。
それでも容赦無く、電車は私が乗り換える駅に着いてしまった。
「あ……じゃ、私、ここだから」
「ああ。また」
また、こんな風に話せるかな。話したいな。永翔くんはきっと明日も朝練があるだろうから、朝の電車で遭遇するだなんて、そんなラッキーはないだろう。
LINEぐらい、交換できれば良かった。でも向こうにしてみれば、私はただの、偶然助けたことのある他校の女子。その私に連絡先を聞かれるって、ちょっと警戒されちゃうような気もする。
永翔くんが私にLINE聞いてくれたら。迷わず教えたんだけどな。そんな他力本願だから、私は彼に連絡先を聞くことが出来ないまま電車を降りることになっちゃったんだ。
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