動け!私

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そのあとは、覚えてない。彼に近づこうと歩いていた電車内の通路から一番近いドアから、咄嗟に駅のホームに出た。 彼らの視界に絶対入らない別の車両へと急ぎ足で向かった。ドアが閉まる直前に何とか再び乗れた。 何で私、逃げた?本能が『逃げろ』と言った。そんなの言い訳?でもさっきの女子は明らかに私に見せつけていた。私が永翔くんに近づくのを嘲笑うように。 あの子は、誰?あの距離感は、彼女、なのかな……?彼女だから、私が近づくのを防ぎたかった。そうなのかな。 こんなとき、どうしたら?どうするも何も、あの子が彼女なら、私の入る隙なんて無い。 永翔くん、笑ってた。私にも、もっと向けて欲しかったその笑顔。その笑顔は彼女専用なのかもしれない。 そうだ、「あの子と運命だと思う」って言ってたな。私はその時、聞き耳を立てていただけで。きっと彼は私を認識していない頃で。その運命の相手とやらは、多分私ではない。 ──私、負けた?ううん、戦っても無い。戦うことすらしてない。戦う前に彼女かもしれないあの女子に、追い払われた。 人生でも何度も経験していない、この、敗北感。せめて、連絡先交換して、もっと仲良くなって告白して……。それぐらいのこと、したかった。 でも、私には、どうやら出来ないみたい。そんな勇気も根性も、強かさも無い。 永翔くん、もっとあなたと話したかった。もっと一緒の時間を過ごしたかった。 私はどうしたら、あなたと自然に一緒にいられる世界線にいられたのだろう……?
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