電車の恋

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電車の恋

「俺、あの子と運命なんだと思う」 電車の中で聞こえた、その声。聞こえたんじゃない。聞き耳を立てていた。その言葉は、いとも簡単に、私を暗闇の底に突き落とした。 大体いつも同じ電車に乗る。乗る車両もほぼ同じだ。乗り換えの駅の、階段降りてすぐのこの車両に、私はいつも乗っている。 大学受験を視野に入れた、高校2年の秋。電車に乗っている時間すらも惜しくて、いつも愛用している単語集『1800』を鞄から取り出した。 この電車が走る桜通線は、沿線に高校がいくつかある。 電車に乗っている高校生は同じ人である率が高い。日によるけど。 同じ中学だった人が通っている学校もある。でも、その中に私と親しい人はいなかった。 だから、沢山高校生がいるといっても、漫画にあるような電車での出会いなんてハナから興味が無かった。 ──ううん、嘘。入学当時は期待してました。そんなことなかなか起きないって現実を見始めたのは高2になってから。 偏差値が高いので有名な男子校。制服がダサ過ぎるせいか、目に留まる感じの人はいない。結果、スルー確定。 たまにカッコいい感じの人もいるけどね。ああいうタイプには彼女がいて当たり前。負け戦と分かっているものに、挑むつもりなんてありません。
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