86人が本棚に入れています
本棚に追加
灰司くんに連れられて体育館に行くと、すでに他の子たちが集まってチーム分けがされていた。
ふと、壁の隅に立った肋木を見ると、天辺に橙樹くんが座っていた。こういうスポーツは好きそうなのに、参加しないのはめずらしいと思った。しかも何やらずっと怖い顔でみんなのことを見つめている。
「ねえ、橙樹くんは誘わなくていいの?」
「誘ったんだけど、そこで見てるってさ」
「そ、そうなんだ」
「本当にいいのかな?」と一瞬思ったが、下級生の子に「早くー!」と急かされたので、私たちは駆け足でコートに向かった。
試合が始まる。ジャンプボール時に撃ち落とされたボールはバウンドし、相手コートへと飛んでいった。受け取ったのは、黄菜子ちゃんだ。
「えーい!」
輝くような笑顔で、しかも元気にボールを投げてくる。いつもとは打って変わったような明るさだ。そのギャップに驚いてしまい、私は黄菜子ちゃんが投げてきたボールに当たってしまった。
「わーい! やったー!」
「ご、ごめーん!」
喜ぶ黄菜子ちゃんの横でチームメイトに謝りながら、私はコートの外へ出る。
私が外野を任されたところは、ちょうど肋木の後ろだった。肋木を見あげると、橙樹くんが自分の膝に肘を突きながらドッヂボールの試合を見つめていた。その表情がどこか複雑そうに見えて、私は思わず首をかしげた。
◆ ◆ ◆
放課後。無事に今日の授業を終えた私は、家に帰ろうと教室を出た。隣には灰司くんもいる。灰司くんは幽霊が見える私のことを気にして、こうして都合があえば一緒に帰ってくれるのだ。
灰司くんと話をしながら図書室の前を通ると、図書室の電気が点いていることに気づいた。
「こんな時間にめずらしいね。誰かいるのかな?」
不思議に思った灰司くんが図書室の扉を開ける。二人で中を見てみると、そこには橙樹くんが机いっぱいに本を置いて、黙々と読んでいた。
「橙樹くん。まだ帰ってなかったの?」
声をかけると、橙樹くんはハッと驚いたように顔をあげた。「なんでここにいるんだ」と言いたそうな顔だった。
最初のコメントを投稿しよう!