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その姿に私は顔が赤くなるくらいドキッとした。その子の顔がとてもきれいだったからだ。色白の肌に瞳が大きいぱっちりとした目。耳までかかった長めの茶色い髪。年は同じくらいで、身長は私より五センチほど高かった。
「きみは?」
男の子に話しかけられ、私はどぎまぎしながら答えた。
「す、杉山陽色です。さっき、この村に引っ越してきました」
「あ、きみが陽色さん? 僕は倉灰司。世花小学校の六年生だよ」
「六年生なら、一個上の先輩ですね」
「いいよ敬語なんて。他のみんなも敬語なんか使わないし」
灰司くんが目を細めて笑う。
灰司くんは私のことをすでに知っているみたいだ。どうして私のことを知っているのか。気になるところではあるが、それよりもさっきから私をじっと見つめてくる犬っぽいこの子のほうが気になった。毛の長い犬のようではあるのだが、やはり毛が青いのが不思議だ。いったい何犬なのだろう。
「あの、この子って灰司くんのペット?」
動物の前にしゃがみこんで聞いてみると、灰司くんが目を丸くするくらい驚いていた。
「きみ、ワン太郎がわかるの?」
「え? う、うん。かわいい子だね」
そっとワン太郎に手を伸ばしてみると、私の手の匂いを嗅いだワン太郎はすぐに頭を撫でさせてくれた。
心地よさそうな顔になるワン太郎。大きい犬だったからちょっとだけ撫でるのが怖かったけれど、毛もふかふかだし、何よりかわいくてつい笑みがこぼれた。
ワン太郎を撫でている様子を灰司くんが愕然としながら見つめている。いったいどうしたのだろうか。首をかしげると、やがて灰司くんは「あっはっは!」と大きな声を出して笑いだした。
いきなり笑いだす灰司くんにびっくりしていると、灰司くんは「ごめんごめん」と言いながらその場にしゃがんだ。
「ワン太郎はペットというか、僕の相棒なんだ。赤ん坊の時からずっと一緒にいるんだよ」
「わぁ、いいなあ……」
私は動物が好きなのだが、ペットを飼ったことがなかった。それに、お母さんが動物ぎらいだから、この先飼うこともないと思う。だから、ずっとワン太郎と一緒にいる灰司くんが羨ましかった。
そんな話をしていると、ワン太郎が私の顔をペロリと舐めた。どうやらもっとかまってほしいみたいだ。
「あはは、ごめんね。放っておいちゃったね」
謝りながら再びワン太郎を撫でまわすと、ワン太郎は満足そうに目を細めた。その隣で灰司くんは「フッ」と笑って曇り空を仰いだ。
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