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カラコリチカは反対していた。
彼女はイスカーチェリ一号の燃料庫密閉リングが、人工ワープホール通過時の圧力下では十分な弾性を保てない可能性があることを指摘し、機体設計からの抜本的な見直しが必要だと訴えたのだ。
だが、上層部はあくまで八月四日の打ち上げにこだわり、カラコリチカの報告を握り潰した。連邦の建国百五十周年の記念式典に合わせたいという、くだらない理由で。
それどころかセンターは彼女をパイロットに指名した。国は、「史上最年少で超光速航行に挑んだ少女」という分かりやすい英雄が欲しかったのだ。
頭の悪い大人たちの、底の浅い見栄と保身がカラコリチカを殺した。
僕は止められなかった。
代わりに僕が死ねば良かったんだ。
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