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「寝れぬのならば飽きるまで話をしよう。そのうちきっと眠くなるはずだ」  それを同衾の許しだと理解した眞白は黒鉄の横に寝そべった。顔が熱くなって胸が苦しくなる。遠慮がちに空けられた隙間がもどかしいと言わんばかりに黒鉄が眞白を抱き寄せた。黒鉄の胸に耳を寄せるような形で密着する。黒鉄の心臓はトクトクと急足で脈打っていた。 「やはり子供はぬくいな。冷える夜にはちょうどいい」 「もう子供ではありません。漢字の読み書きが出来るのを黒鉄様もご存じでしょう?」 「料理は作れぬがな」 「もうっ! 黒鉄様の意地悪!」  するとまた黒鉄は大口を開けて笑った。その笑顔が何よりも好きだ。もっと黒鉄の笑顔が見たい。 「黒鉄様の笑顔は素敵ですね。黒鉄様は私の歌を美しいと言って下さいましたが、私は黒鉄様の笑顔の方が素敵だと思います」 「実のところ、お前に過去のことを話したことで心が少しだけ軽くなった気がするのだ」  黒鉄は仰向けになると眞白の顔も見ずに言った。 「俺は孤独だった」  気の遠くなるほどの長い時間を一人、罪を抱えながら向き合う。眞白にはその苦しさを推し量ることは出来ない。 「だがお前が俺の元にやってきてくれた。お陰で俺は今、笑うことが出来ている」  そっと抱きしめられた。黒鉄の大きな身体が眞白を包み込む。黒鉄の匂いに頭がクラクラした。意識がぼんやりとする。 「眞白……お前に会えてよかった」  出会ってから初めて黒鉄から名前を呼ばれた。その瞬間、身体中が喜びに震える。奥底から湧き出る熱に喉が渇き心臓は生き急ぐように拍動する。下腹部が熱くなり、腹の奥が疼く。生まれて初めて感じる熱に眞白は恐ろしくなって黒鉄にしがみついた。 「黒鉄様……なぜか、とても……熱くて」  縋り付くように見上げると黒鉄も眞白の異変に気付いたのか、眉間に皺を寄せながら眞白を凝視していた。 「お前……これはまさか……」  心なしか黒鉄の息も荒い。何かを耐えるような顔をしている。眞白は自身の身体の中で暴れ回る得体の知れない熱に抗うことで精一杯だった。 「まさかお前が色香を放つとは」  色香──年頃の鬼守の一族が放つ誘惑の香り。それは本人には感じるとることは出来ない。だが鬼にとっては強烈な誘惑となる。鬼が強く惹かれる色香を放つ鬼守ほど強い子孫を残せると村で教えられた。 「何がなんだか分かりません。ただ身体が熱くて仕方がないのです。私が私でなくなってしまいそうで……助けて、黒鉄様」  鬼守が熱に浮かされた時は色香を辿って鬼が来て、苦しさを鎮めてくれると言われた。黒鉄ならきっとこの熱を解放してくれるに違いない。 「駄目だ、眞白。俺は一度外に出る。お前の色香が強烈で今にもお前に酷いことをしてしまいそうだ」 「嫌です。一人になりたくありません」 「言うことを聞け。色香は鬼を狂わせる香りだ。これから番を持つお前の純潔を奪うなんて出来ない」  眞白を大切に思うからこその選択だと頭では理解している。しかし本能が黒鉄を狂おしいほどに求めていた。理性をものすごい勢いで薙ぎ倒して頭の中を支配した。 「助けて…‥.苦しい」  黒鉄に身を預けるように寄り添った。黒鉄の肌に触れると興奮からか少し汗ばんでいた。漂う男の香りに眞白の昂りは止まらない。身を捩ると己の下腹部が濡れていることに気付いた。  欲は兆しを見せ着物を押し上げ主張している。秘部の辺りに気持ち悪さを感じて触れるとそこはぐっしょりと濡れそぼっていた。鬼守の本能が目の前の鬼を求め、身体は鬼の精を受け入れようと準備を初めていた。 「眞白、自分でソレを慰めれば少しは収まるだろう。……出来るか?」  眞白はふるふると首を横に振った。何も考えられない。ただ、黒鉄に触れて欲しかった。 「……分かった。俺がどうにかしてやる。手で慰めてやるからそれで勘弁してくれ」  黒鉄は眞白を抱き抱えると自分の膝の上に座らせた。そして帯を解き前をはだけさせる。黒鉄に寄りかかると臀部の辺りに熱い塊を感じた。黒鉄の欲だ。荒々しい熱を孕んだ棍棒は黒鉄の立派な体躯に相応しい大きさだった。黒鉄の熱をもっと感じたいと眞白は無意識に己の臀部を擦り付ける。 「こら、大人しくしろ。頼むから誘惑しないでくれ」  切羽詰まった声も眞白の欲を抑えることが出来ない。痺れを切らした黒鉄が眞白の小さな顎を掴んで無理やり自分の方を向かせる。そして呼吸ごと奪い去るように眞白の濡れた唇を自身の唇で塞いだ。黒鉄の分厚い舌が眞白の口内を蹂躙する。口の中を丸ごと食われてしまうのではないかというくらいの激しさだった。 「んっ、むぅ……」  これでもかと口を舐めとられた後に唇同士が離れる。銀糸が名残惜しそうに唇と唇を繋いでいたが、プツリと途切れた。 「触れるぞ」  黒鉄の手が探るように腹に触れた。どんどんと下へ下っていき、臍を越えて蜜に濡れる黒い茂みに到達した。
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