3/4
314人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
「やっと、黒鉄様と一つになれました」 「お前をこの腕で抱きしめられることが出来て……生まれてきた中での一番の幸福だ」  黒鉄が身を倒し覆い被さるようにして眞白を抱きしめた。結合した状態で肌と肌を隙間なく重ね合わせると、本当に一つになったかのような気分になる。後孔の痛みはやがて快感へと変わる。咥え込んだ棍棒を咀嚼するかのように肉壁がうねっているのが自分でも分かった。 「そんなに煽らないでくれ。優しく出来なくなる」  黒鉄は眞白に接吻をすると抱きしめた状態のまま腰を動かし始めた。棍棒が腹の中を擦り上げる。大きな雁首が眞白の泣きどころを抉った。萎れていた幼茎が再び硬さを取り戻す。 「ああっ! ハァ……あ、すごいっ!」  掻き回される度に腹の熱が高まっていく。奥を突き上げられると重たい快感が衝撃波のように脳まで広がる。理性が吹き飛ばされて頭が真っ白になった。汗で湿った肌がぶつかり合う音が部屋に響き渡った。 「お前の中はすごいな……溶けてしまいそうだ」  黒鉄がさらに律動の速度を上げていく。奥を容赦なく突かれて頭の中でいくつもの閃光が弾けた。息も出来ないくらいの暴力的な快感が眞白の身体で暴れ回る。限界はすぐそこまで来ている。 「あぅっ、あんっ、あっ!」  ぐちゅぐちゅと粘質な音がさらに眞白を昂らせた。昂りはやがて下腹部に集中し、吐精感が込み上げてきた。 「黒鉄様っ! 出るっ! 出ます……!」 「ああ、我慢しないでいい」  黒鉄はトドメを刺そうとする勢いで最奥を突いた。もう何も考えられない。世界が白く弾ける。 「イクッ! ああっ! あぁぁぁっ‼︎」  ぎゅうっと肉の輪が棍棒を締め付けた。黒鉄の形を腹で感じながら果てる。幼茎から白い欲が飛び、腹の上を汚した。 「クッ……!」  一際深く奥を突かれた。そして最奥で熱が弾けるのを感じた。ドクンドクンと脈打つのを腹で受け止めながら恍惚な表情で黒鉄を見上げた。絶頂の余韻に浸る身体を黒鉄が抱き抱える。 「眞白、愛している」  眞白はその言葉に接吻で答えた。互いの気持ちを口移しするかのように何度も唇を合わせる。どれだけ唇を重ねても足りない。 「……お前の頸に、俺の証を刻んでもいいか?」  鬼が碧の一族の頸に噛み付いて跡を残せば番の関係が成立する。ずっと黒鉄と番になりたかった。最初こそは掟に従うままにそれを望んだが、黒鉄の心に触れ、自分の意志で黒鉄の番になりたいと願った。 「一生消えないように、深く刻み込んで下さい」  黒鉄はゆっくりと結合を解いた。中に解き放たれた精が後孔から溢れるのを感じる。黒鉄は眞白を後ろから抱き抱えるような体制で膝の上に乗せた。  そして眞白の後ろ髪をかき上げた。頸に唇が触れる。頸椎の出っ張りの一つ一つに接吻を落とした後、眞白の頸に歯を立てた。黒鉄の歯が食い込み痛みが走る。ただそれも一瞬であとはジンジンと疼くだけだった。 「これで俺とお前は一生の番だ。どんな時も共にいよう。嫌と言われようが絶対に離さんぞ」 「それは眞白も一緒です。黒鉄様がどこかに行ってしまっても、世界の果てまで追いかけますからね」  軽口を叩き合った後に、二人で大笑いした。そのまま布団に倒れ込むようにして横になる。足を絡め隙間もなくなるくらいに二人は密着する。 「温かいな……」  互いの温もりが布団の中で交わる。少し冷えた黒鉄の身体が温まるように肌と肌をより深く密着させた。 「この温かさがあればきっとこの先、どんなことでも乗り越えていけるだろうな」  黒鉄は眞白を抱きしめて頭に顔を埋めた。眞白も黒鉄の胸元に耳を寄せた。心臓が穏やかな速度で命を刻んでいる。 「明日から本格的に新幕府が動くぞ。まずは顔見せ。それから役職を決めた後は新たな法の整備だ。売られた碧の一族の行方も追わなければならない」  眞白は政治が分からない。だが黒鉄が言っていることが簡単なことではないのが分かる。幕府内部では「人喰い鬼」という汚名を拭うことは出来たが、耀の国の民の誤解を解くにはかなり時間がかかりそうだ。 「常識を変えるというのは容易いことではない」 「真の歴史を伝えるにも、受け入れられない人も出てきますからね」 「ああ、お前も碧の村を巡った時に感じただろう」  眞白がどれだけ真実を話しても真実を受け入れなかった人も多かった。生まれ育った時に教えられた常識というのは人の根幹に染み付く。かつての眞白が掟に縛られていたのと同じように、過去の常識を取り去ることは至難の業だろう。 「困難の連続だろうな。だが、俺はやるぞ。お前と耀の国の夜明けを見るために。お前がいればなんだって出来る」  黒鉄の誓いに眞白は身を寄せた。黒鉄は眞白の頸をそっと撫でる。まだわずかに痛みに疼くがそれすらも心地いいと思えた。 「どうか俺を、見ていてくれ」  互いの体温が交わる。窓の外から月が二人を見守っていた。どんなに深い夜でも時が経てば朝が来る。一人では心許ないけれど、二人寄り添えば孤独も彼方へと消えていく。  黒鉄の手を握った。そのまま目を閉じる。黒鉄は眞白の手を握り返してくれた。新しい世界がこの大きな手によって作られるのだろう。それを一番側で見守るのが眞白の生きる道だ。  目が覚めたら、きっと美しい朝日が顔を出す。  大丈夫。この国の未来は、明るい。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!