20. 母なるもの 2

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 志麻さんは、言葉を続けた。 「正嗣くんだって、思うところがあって、こんな行動に出たはずです。まず先に話を聞いてあげてください」 「うるさいわね、なにこの女」  しかし、芙蓉さんは取り合うつもりもないらしい。吐き捨てるように言うと、さらに足を踏み出した。  あたしは正嗣くんを背後にくっつけるようにしたまま、後退する。 「失ってからは遅いんです」  志麻さんが取りすがる。 「愛されていないと思った子どもは、思い切った行動に出てしまうことがあります。それで私は自分の子を失いました。あなただって、そんなことは望んでいないはずです。どうか、正嗣くんにもっと優しく……」  ここでさすがに、芙蓉さんも動きを止めた。 「失った……? 自分の子を……? どういうこと」  ここで志麻さんの表情が変わった。  さっきまではきりっとした雰囲気だったのが、突然、かたい殻が砕け散ってしまったような痛々しいものになった。  たぶん、勢いで言ってしまったことなんだろう。  でも、それは一瞬のことで、また断固とした態度に戻る。  それは意志を強めた、というよりむしろ、やけくそっぽい雰囲気。  『こうなったら全部言ってしまおう』  そんな心の声が聞こえるようだった。
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