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「ごちゃごちゃ言ってうるさいのよ。正嗣はあたしの子よ。どう扱うかを他人にごちゃごちゃ言われる筋合いはないでしょ」
そう言って手を伸ばしてきた。
あたしは思わず背を向け、正嗣くんを抱きかかえるようにした。
「ちょっと、なんであの女の味方してんのよ。頭おかしいんじゃない」
芙蓉さんは急にそんなことを言いだした。
なんでそんなことを言われるのか、わけのわからないあたしが、きょとんとした顔を向けると、忌々しそうにチッと舌打ちをする。
「あんたは別にこの家に、義理も恩もないでしょ。こいつらの悪事に協力するなんて、バカね」
「あ……、悪事……?」
あたしはあっけに取られる。
実の子に虐待まがいのことを日常的にしていたうえ、子供を一時とは言え保護していた相手にいきなり悪態をつきまくるような人が、いきなりそんなことを言い出すことに、本当にびっくりした。
「あの、なにか誤解してないですか。あたしたちは別に、正嗣くんを攫ってきたわけじゃないですよ?」
それでもなんとか精神的な押し返しを試みようと、事情を言ってみた。
でも、逆効果だったみたい。
「あんたみたいなのが、屁理屈こねてんじゃないよ」
(かえって逆上させちゃったよ)
あたしは無駄な努力を悔いた。
どうやら相手は、言ってる内容がどうのというより、下っ端扱いしているあたしみたいな人間に言い返されたのが我慢ならなかったらしい。
「あたしは知ってんだからね」
えらく自信満々に言い出した。
(知ってるって、なにを)
だって、あたしはこの人には初めて会ったくらいだ。どこにも接点がない。はずだ。
でも芙蓉さんは、勝利を確信している身振りで、思いっきり叫んだ。
「あんたが週刊誌のスパイだってこと!」
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