21. 追放

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「そうやって唆されたのは、本当です。恩のある人が、週刊誌の記者で」  あたしは正直に言うことにした。  言い訳したところでごまかせるようなことじゃないし、なにより、よくしてくれたこの人たちにこれ以上嘘をつきたくなかった。 「でも、なにもまだ書いてません。報告もしてません。……正直、情報を流すことに、ためらいがあったのも本当です」  そんなことを言っても、信じてもらえるかはわからなかった。 (というか、たぶん、無理だよね)  それでも、言わずにはいられなかった。 「一時間、さしあげます」  爽希さんがぼそりと言う。  その声音は、ここ最近聞いていたものとは違う、冷たいもの。  そう、初めて会ったときのような、冷たい金属を思わせる、声。 「そのあいだに、必要なものを持って出て行ってください。残りの荷物は送ります。宛先はあとで連絡してください。……ああ、僕のオフィスのほうに。秘書に伝えておきますので」  こわばった表情のまま、ひどく平坦な声でそう指示された。  今さら、あたしに対して、なんの感情を働かせるつもりもないみたいだ。 (もう、なにを言っても無駄だろうな)  あたしはあきらめて、部屋を出た。  雲雀さんは、ひと言も発さなかった。  今までお世話になったお礼でも言おうかと顔を向けたが、すっと視線を逸らされてので、余計なことはしないことにした。 (これ以上、傷つけたくない)  正直、あたしもすごいショックを受けていた。  自業自得なのはわかってる。  でも、こんなに自分の心臓の一部を、いきなり切り落とされたような気持になるなんて、思ってもみなかった。
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