22. 弟子失格

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 『半鐘』は、ごった返していた。  カウンターと、テーブル席が三つある程度の、もともとあまり広い店じゃないし、かなりざっくばらんな雰囲気だ。  でもよくよく見ると、衝立などをうまく配置して、ほかの席の会話が聞こえにくいようにしてある。  たぶん、堀田さんの勤め先の出版社の人たち御用達の店なんで、こういう心遣いをしてるんだろう。  実際、何人かいる客はいかにもそっちの業界の人たち、といった雰囲気だ。  店をざっと見渡すと堀田さんはまだ来てないみたいなので、あたしは一番奥の空いていた席にひとりで座った。  店の人がお通しを持ってきたとこに、連れが後から来ることを伝えておいた。  とりあえず頼んだ生ビールをちびちび飲んでいるうちに、堀田さんがやってくる。 「おう。げっそりしてんな」  席に着くなりそう言いながら、お手拭きで顔を拭く。  店の人にすっかり覚えられているのか、注文もしてないのに、さっさとジョッキのハイボールが運ばれてきた。 「そうですね……。とりあえず、新しく住むところ、探さないと」 「ふーん。どうだ、これっきりにせず、もう一回だけ接触するつもりはないか? 記事にさえできりゃ、ホテル代もあとで経費で落とせるぞ」  どうやら、あたしが落ちこんでいるのは、取材ができなくなったせいだと思ったみたい。
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