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相手はすぐに、あたしの不審感に気づいたようだ。急いで説明してくれた。
「ああ、変に思ったらごめんなさい。さっき、レジで堀田さんと話してるのが、耳に入って。沖津棗さんって、ちょっと他にはない名前だから、もしかしてと思って」
(えっ、堀田さんまで知ってるんだ)
「沖津さんにはお世話になったから、ついつい懐かしくなっちゃって。ちょっとオハナシでもできたらと思ったの。突然、ごめんなさいね」
鏑木さんはそう言って目を細めた。
(まさか、お母さんの知り合いだったなんて)
あたしはあたしは慌てて申し出た。
「あの、あの、よかったら……、これから、どこかのお店にでも一緒にどうですか。私も、母の話を聞きたいです」
「私は大丈夫だけど……。いいの?」
「ぜひ。ええと……、お店……」
どこかいい店でも紹介したいところだけど、いかんせんこのあたりの土地勘が全くない。情けない。
(せっかくなんだから、気の利いた店に行きたい!)
スマホを取り出して必死で探すんだけど、どれもなんだか今いち。迷ってるのを見かねて、鏑木さんが提案してくれた。
「よかったら、ちょっと行ったところに、知り合いがやってる小さいバーがあるから、そこはどう?」
「い、いいんですか?」
「もちろん。そちらがよければ」
「じゃ、じゃあ、お願いします」
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