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思いもかけない反応に、あたしは戸惑った。
「どういうことですか?」
グラスの中身をこぼしそうな勢いで訊く。
鏑木さんは言うかどうか迷っているのか、すこしのあいだ黙っていたけど、結局、口を開いた。
「たしかに、一時期は堀田さんと留見子さんが組んで取材に行ったりもしてたけど……。結局、すぐに決別したはず。だから、流派違いというか……」
「決別?」
これはちょっと、意外な話だった。
「取材方針が合わないとかなんとかだったみたい。留見子さんが、はっきりそう言ったわけじゃないけど。一度一緒に飲んだときに訊いたら、そんな雰囲気だったな。一応同業者だから、あまり厳しいことは言わないでおいたんだと思う。留見子さんはそういう優しさを持ってる人だったから」
「そんなこと……、堀田さんは一度も言わなかったです」
「ああ……」
鏑木さんは妙に納得しているような表情になる。
「というか、なんなら一番の理解者同士だったっていうようなニュアンスで……」
「まあ、堀田さんのほうは執着はしてたかもね。……恋愛感情も、正直あったみたいだし」
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