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「やっぱり、そうだったんですか」
あたしは頷いてみせる。
別にはっきり言われたわけじゃないけど、そういうニュアンスを感じることは、正直何度かあった。
だからまあ、心当たりに正解をもらったような気分だ。
「まあ、留見子さん、モテたから」
鏑木さんはそう言ってニヤリと笑う。
「そうなんですか?」
「そうそう。でも留見子さんのほうは、堀田さん相手に限らず、全般的にそういうの面倒くさがってたふしはあったけど」
「じゃあ……、あの」
あたしは、思い切って訊いてみることにした。
「あたしの父が誰か、ご存じですか」
この質問に、鏑木さんは黙りこくった。
答えたくないのか、答を知らないからなのかはわからない。
他人の家族の事情に首を突っ込みたくない、って人がいることだって、わかってる。
でも、あたしは一縷の望みを捨てきれなくて、次の言葉が出てくることを期待して、ずっと待っていた。
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