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「そうだ、たしか……」
鏑木さんは唐突に、バッグからスマホを取り出した。
「ちょっと待ってね。まだサービスやってるかな……」
そう言って、なにかを調べ始めている。
「ええと……、棗さん、誕生日訊いてもいい?」
「あ、はい、12月27日です」
「ありがとう」
鏑木さんは、画面にそれを打ち込んだみたい。
「あ、入れた」
そう言ってから、画面をこちらに見せてくれた。
「『いのち日記』?」
「留見子さんの、育児の記録。まあつまり、棗さん、あなたの」
「えっ」
「練習がてら、記録を残してみようって言って、連載形式で書いてたの。まだちゃんと残ってる」
「そんなの、母の名前で調べたときには、出てきませんでした」
「あ、そうなんだ。一応、パスワードがわかってる人間しか読めない日記サービスだから、かな? 私もずいぶん覗いてないから、教えてもらったパスワード忘れてたんだけど。娘の誕生日、って言ってたのは覚えてたから、ようやく今入ることができてよかった。読んでみたら? 本になってるようなものとは、かなり違った雰囲気だから」
「は、はい……」
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