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「それになにより、あなたのことを書いてあるんだし、ね」
鏑木さんの言葉に、あたしはなんだか、頭のなかが熱くなってきた。
母の痕跡が、しかも自分のことをどう思ってくれていたのか、わかるものが残っているなんて、思ってもみなかった。
(今日はなんだか、びっくりすることばっかりだ)
あたしのそんな気持ちをわかってくれたのか、鏑木さんは今日はこのあたりにしましょうか、と提案してくれた。
「これ、渡しておくから。なにかあったら、気軽に相談して」
そう言って、名刺もくれた。
「い、いいんですか」
「私も若い頃はずいぶん、留見子先輩に面倒みてもらったし。恩返しみたいなものだから、気兼ねしないで」
「ありがとうございます」
憧れの人に会えて話ができただけでもすごいことだったのに、さらにはなににも代えられないすごい贈り物をもらえたようで、帰りの道のことは、ほとんど覚えていなかった。
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