25. 残された日記

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 しかも、いいことばかり書いてあるんじゃない。 『せっかく作ったオーガニックの手づくり離乳食。なんとか食べさせたのに、後から吐いた。ちょっと、どうすんのよ、材料まだいっぱい残ってるんだけど』 『窓を開けることを覚えたら、なんだかやたら執着してる。危ないからストッパーを買ってきてはめたら、開けられなくなって大泣き。そんなに死にたいか』  ま、書いてあることは不平不満の類だ。  だから、本当はここで嫌な気持ちにならなきゃいけないのかもしれない。  でも。  でも、そういう感情を持ったことが書いてあるからこそ。  書いてあることが、お母さんの感情の足跡が、すごく生々しく感じられる。 (本当に存在していた人の、言葉)  噛みしめたい感情が、頭のてっぺんからどんどん身体へと回ってくる。  まるで、お酒に酔ってるみたい。 (お母さんの、気持ち)  やがて、だんだんと書いている内容を、頭が解釈できなくなってきた。  なのに、読むのを止められない。  ただただ目の前に広げられた愛情の名残を、あたかも餓鬼のように、ひたすら貪り喰らうしかない。
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