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しかも、いいことばかり書いてあるんじゃない。
『せっかく作ったオーガニックの手づくり離乳食。なんとか食べさせたのに、後から吐いた。ちょっと、どうすんのよ、材料まだいっぱい残ってるんだけど』
『窓を開けることを覚えたら、なんだかやたら執着してる。危ないからストッパーを買ってきてはめたら、開けられなくなって大泣き。そんなに死にたいか』
ま、書いてあることは不平不満の類だ。
だから、本当はここで嫌な気持ちにならなきゃいけないのかもしれない。
でも。
でも、そういう感情を持ったことが書いてあるからこそ。
書いてあることが、お母さんの感情の足跡が、すごく生々しく感じられる。
(本当に存在していた人の、言葉)
噛みしめたい感情が、頭のてっぺんからどんどん身体へと回ってくる。
まるで、お酒に酔ってるみたい。
(お母さんの、気持ち)
やがて、だんだんと書いている内容を、頭が解釈できなくなってきた。
なのに、読むのを止められない。
ただただ目の前に広げられた愛情の名残を、あたかも餓鬼のように、ひたすら貪り喰らうしかない。
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