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「資料……ですか?」
(なんだろう?)
あたしは首を傾げた。
『あの家の設計図だよ、設計図』
「設計図?」
あたしはオウム返しに訊くしかない。
だって、それがどういうことに役に立つのか、見当もつかなかったからだ。
『あの家、からくり細工で有名な作家が関わってたんだよ』
「はあ」
(それがなんだっていうんだろう)
『それで、どうもな』
「はい」
『設計図は施工が終わったら処分させたって話だけど、それの一部を撮影したものを入手できたんだよ。あの家、いろいろと裏の仕掛けがあるらしい』
「仕掛け?」
『なんだろうな、ほら、あれ。忍者屋敷? あんな感じらしいぞ』
「に……忍者、ですか」
(そんなまさか。テーマパークじゃあるまいし)
あたしが半信半疑なのを感じたのだろう。堀田さんは言葉を続けた。
『螺旋階段も、かなり怪しいと思うぜ。となると、話が変わってくるだろ?』
「はあ、まあ……」
煮え切らないあたしの態度に、堀田さんはちょっと焦りを感じてるみたいだった。
『まあとにかく、見てみりゃわかるって。貸してやるから、取りに来い』
「はあ……」
やたらと、積極的だ。
『受付に預けておくから、あとで社まで取りに来い』
「はあ……」
『じゃあな。がんばれよ』
「はあ……、どうも……」
言いたいことだけ言って、堀田さんは通話を切った。
正直、全然、乗り気になれない。
でも相手の勢いに負けて、ついつい承諾してしまったような形になってしまった。
(あーあ……)
優柔不断な自分に腹が立つ。
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