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思わず窺うように顔を上げると、にこりともせずに、履歴書を、とだけ言われたので、さっそく手渡す。
牧園さんはそれにひと通り目を通してから、あいだのテーブルに置いた。
「今までは、事務のお仕事をされてたんですよね」
「はい」
「保育や、きょうだいの面倒を見ていたなどの経験は」
「ないです。私は独身ですし、天涯孤独なんで、子供もきょうだいもいないんです。ただ……」
あたしは、昔の生活を思い出しながら続けた。
「私は、施設で育ちました。そこには、色んな年齢の、色んな事情を抱えた、抱えさせられた、子どもだちがいっぱいいました。だから、もしそういう子がいても、普通の人よりはびっくりしないと思います」
これは正直な話だった。
それをどう捉えるかは、相手に任せるしかない。
「なるほど」
牧園さんは、そう答えただけだった。
肯定なのか、否定なのか、全然わからない。
(そういえばさっきから、あまり表情を変えないような気がする)
あたしを警戒しているのか、それとも、元々そういう性格なのか。
なんにせよ、なかなか扱いづらそうな人物ではある。
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