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牧園家の最寄駅を降り、すでにもう遠い記憶になっていた、懐かしい道筋をたどる。
一歩一歩、進むうちに、あたしの足取りは重くなった。
ポラロイドを見て受けた衝撃が、だんだんと滲んできたせいかもしれない。
追及してやろう、するべきだ。そういう感情が、だんだん強度を失い始めていた。
確信に似たなにかがさっきまであったのに、それがどんどん薄まっていく。
(やっぱり、引き返そう)
とうとうそう決めて、足を止めたときだった。
横に、スーッ、と車が止まった。
(見覚えがある。……どこでだっけ)
じっと見つめて思い出そうとしたが、それより前に窓が開いた。
顔を出したのは、例の、芙蓉さんだった。
「あんた、あの家に行くんでしょ」
前置きもなく、いきなり言われる。
(えっ)
なんで、知ってるんだろう。
そう思ったけど、まあ、ここにいるってことはそういうこと、と推察するのは、それほど難しいことでもないか。
ただ、なんでこのタイミングで、かち合うんだ? という違和感はある。
「あたしも行くのよ。どう、一緒に乗ってく?」
あげくに、そんな提案をされた。
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