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なんで突然こんなに馴れ馴れしくされるのか、あたしにはまったくわからない。
なので、後ずさりながら断った。
「いいです。帰るところなんで」
「今さらそんなウソ言ったって、無駄よ。行き先はあっちでしょ」
そう言って螺旋邸の方向を顎をしゃくって示したあと、突然車から降り、あたしを引きずるようにして車に乗せてしまった。
「あの、ちょっと、ちょっと……」
「真実を追求しに行くんでしょ? 設計図が出てきたらしいじゃない。あたしも協力するわよ」
(ん?)
さすがに、あたしもここでおかしいことに気づいた。
「なんでそんなに詳しい事情を知ってるんですか」
「あら、だって」
芙蓉さんは意外そうな顔をする。
「あなた、広光の部下なんでしょ?」
「ひろ……みつ?」
(誰だ?)
と一瞬思ったが、すぐに思い出した。
堀田さんの名前だ。
堀田広光。
下の名前で呼ぶことなんてないから、最初わからなかった。
(というか……)
つまり、芙蓉さんは、堀田さんを、下の名前で呼んでるってこと?
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