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「取材、受けてもいいわよ」
芙蓉さんはさらに驚くことを言ってきた。
「え? どういう意味ですか?」
「ほら、テレビとか週刊誌によくあるじゃない。近所の評判とか、親戚の話とか。そういうの、必要でしょ」
「いや、別に私は記事にするって決めたわけじゃないんですけど」
なんとなくカチンと来て、あたしもちょっと強めの口調で返してしまう。
なにが気に障ったのかは、自分でもわからないけど……。
いや、なんでかしらないけど、バカにされてるように感じるのだ。
口調や目つき、態度から。
「それより、堀田さんとお知り合いなんですか」
あたしは一番気になることを訊くことにする。
芙蓉さんはそれでやっと、あたしがそれを知らないことがわかったらしい。
露骨に、失敗した、というしかめっ面をした。
「た、ただ単に、取材を受けただけよ。あいつらの悪行を明るみにしてくれる、っていうから」
あげく、見え透いたことを言い始めた。
(ただの取材対象が、記者の名前を呼び捨てにするかい)
あたしは心のなかでツッコミを入れたが、表面的には黙っていた。
どうやら、この人は自分の思っていることを、黙っていられないタイプと見た。
なら、話したいだけ話させたほうがよさそうだ。
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