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雲雀さんの言葉を聞いて、志麻さんがなんとも言えない複雑な表情になった。
(そりゃそうだよね)
あたしがのこのこ顔出してきて、しかも雲雀さんに会うことを許されるなんて、なんていうのか、色々な理屈がおかしいだろう。
でも、それがわかっていても、あたしは雲雀さんに会いたかった。
(ああ、そう)
会いたかったんだ。
この家の、住人たちに。
せめて言い訳させてくれと、そんな甘ったれた願望を、どこかにずっと持ってたんだ。
それで、あたしは志麻さんの困惑に気づかないふりをして、玄関を入った。
最初に目に入るのはやっぱり、例の大きな螺旋階段なんだけど、あたしはそれも見ないふりをして、奥のリビングにまっすぐ向かった。
部屋の中央には、雲雀さんがいた。
車いすの背もたれには触れず背筋をしゃんと伸ばし、鋭い眼光でこちらを見ている。
でも、不思議だった。
目つきは今まで見たことないほど厳しいものではあったけど、そこに、拒絶の色はないように見える。
少なくとも、あたしに対してきちんと対しようとしてくれてる意志は感じる。
だからあたしも、背筋に力を入れ、まっすぐに雲雀さんを見つめ返した。
「ご無沙汰してます」
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