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「雲雀! 雲雀、大丈夫か!?」
爽希さんの心配する声が聞こえる。
たぶん、志麻さんが連絡して、慌てて帰ってきたに違いない。
「あの女は追い出したぞ、雲雀……」
話しながらリビングに入り、一瞬にして身構えた。
あたしがいるとは、聞いてなかったんだろう。
「なんであんたがここにいる」
あまりにも冷たい視線に、あたしは首を竦めるしかない。
「あたしが招き入れたの」
見かねたのか、雲雀さんが庇うように口を出してくれた。
それでも、気に食わないことは気に食わないのだろう。
硬い表情は変わらなかった。
「いくら雲雀がそう言ったからって、図々しい……」
そこまで言っている途中だった。
「ちょっと、逃げるんじゃないわよ!」
怒鳴りながら、芙蓉さんまで飛び込んできた。
「あなたもいい加減にしてください。そちらの家とは、一切関わりを持つつもりはないと、繰り返し言っているでしょう。大基くんはお気の毒でしたけど、とにかくお引き取りください」
爽希さんは苛立つ。
「お気の毒だなんて、言える立場なの!」
その態度に、芙蓉さんはかえってヒートアップする。
「まったく。僕のいない隙を狙って、妹にわけのわからない因縁をつけに来るなんて、汚い手を使うのはもうやめたらどうですか」
そして、あたしを見た。
「あんたもいい加減にして、この女連れて帰れ。今すぐ」
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